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ihatov88の小咄集

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8流血する部族 4/29



 誰もが望んだ平和な地球。世界は核を始め武器という武器を放棄し、世界中の言語から「戦争」という言葉が消えて久しい世の中。世界は急速に近くなった。

 文化人類学者の権威である北海三郎は自身の論理として争う事を否定しているが、生物として「争い」という行動が遺伝子から無くなることを懸念していた。
 この度の研究でジャングルの奥でたった一杯のミルクのためにお互いに血を流し合う部族がいると聞き、その行動を映像に収めるべく現地に向かった。

 海を越え山を越え、川を渡り森を抜けようやく手前の町にたどり着き現地で情報収集。
「一杯のミルクのために血を流し合うのは本当か?」
「間違いアリマセン」
そう言って村人は森の中へ続くわだちを指差す「サッキそれを見に車が行きました」 
 なに?自分と同じような研究をしている者がいるというのか。先を越されてはいかん、三郎はチャーターした車でわだちの先を追い掛けた。
 
 行軍三日、ジャングルの先にある村にとまっている大きなバス、そこに列をなす猛者たち。
「これは、どういうことだ?」
恐る恐るバスの正面に回る三郎、そこで見た風景を見て脱力感が襲った――。

   これは……、献血やんかい!

 バスから次々とミルク片手に人が出てくる。あの中で多くの血が流されているのか、情報は間違いないが研究は大失敗だ。ああ、世の中って平和だ。

「そこのアナタ、ボーッと立ってるなら協力しなさいよ!」
「あ……はい」
 三郎は黙って男たちの列に並ばされた。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔