ihatov88の小咄集
22フィギュアの女王 5/29
スケート選手の朝田マコはフィギュアスケート選手にしてオリンピックのメダリスト。この度オリンピックを戦い終えて現役引退がささやかれていたところで、渦巻く報道陣の中で記者会見が行われた。そこで発表された声明が、
「休養宣言」
だった。
これには日本中を驚かせたが、彼女には彼女なりの考えがあってのこと。引退でも現役続行でもない「休養宣言」、ファンたちは彼女がいつかリンクに戻ってくるのを期待した。
「休養するということは、戻って来るということですか?」
「……いえ。その辺はまだ……」
光り続けるフラッシュの中で質問攻めにあうマコ。本当のことは言いづらい。
「マコさんは休養中はどうされるのですか?」
「えーっと、学業に専念したいと思ってます」
「その間はテレビとかには出られるのですか?」
戸惑うマコ、横に座っているマネージャーの様子をうかがう。
「そうですね、オファーがあれば考えます」
一同どよめき。知名度バツグンの彼女がテレビに出れば芸能界が華やかになるのは間違いなしだ。
「出るとすればどんな番組に出たいですか?」
「それは……、オファーがあれば」
曖昧な反応にさらに違う記者が質問をした。
「逆に出たくない番組ってありますか?」
「それは、あります」今までのモジモジは全くなくこれだけはキッパリと答えたマコ。
「お笑いは、ちょっと……」
その辺やっぱりスケートの選手だ。お笑いだけはNGのようだ。だって……、ねぇ。スケートの選手だけに許されないんだろうねぇ。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔