ihatov88の小咄集
29地獄の沙汰も 6/13
俺は死んでしまった。
どうやって死んだのかは覚えていないけど、とにかく俺は行列の中にいて閻魔大王の審判を待っている。
生きてた時ってどんなだったっけ?
うーん、思い出せない。というより、学校もロクに行ってなかったし、働いてもいなかった。気付けば死んでいた。そんな感じだ。
「次の者、入れ!」
呼ばれたので中に入ると座ってたんだ。その閻魔大王とやらが杓持って――。
「お前、生前働いてなかったって?」
「はい」
元気よく答えてやった。ウソ付いたら舌抜かれるし。
「お前のぅ、『地獄の沙汰も銭次第』ゆうの知ってるやろ?」
「はあ、知ってますよ」
「じゃあ今からでも戻って働いて来いや。このままやったらお前、無間地獄やでぇ……」
「じゃあ、生き返れるのか?」
「ああ、エエで。こっちもショボい奴地獄入れても意味ないねん。お前地獄行っても反省なんかせんやろ?」
「そうッスね!」
ここでもウソ付かない。死んでも舌は抜かれたくない。
「しゃあないのう、死ぬまでいっぱい金儲けせえよ」
こうして俺は生き返った。働くことの意味が少しだけ分かった。
駐在さんはマダムに自動車の構造について説明を始めた。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔