ihatov88の小咄集
32コンビニ 6/28
駅前のコンビニ。駅前だけにいつも人で賑わっている。
仕事を終えた俺はちょっと疲れた体で電車から降りたあと、光に集まる虫のようにフラッとコンビニに立ち寄った。
買うものがなくてもついつい入ってしまう。コンビニって不思議な魅力がある。
家に帰っても誰もいないし、食べるものがない。どんだけ疲れていても腹は減る。あてもなく店内をウロウロしていると買いたいものがい見つかった。
俺はその他のものも一緒にカゴに入れてレジへ。若い学生風のキレイな女性の店員が俺に声を掛けた。
「こちら、温めますか?」
笑顔につられてこちらもつい笑顔になる。そんな俺が悔しい。そんなに見つめられたら恥ずかしいじゃないか……。
「それじゃあ、お願いします」
間が持たない俺はそれをお姉さんに預けて書籍の棚に移動した。
レジに背を向け雑誌を立ち読みしていると、後方のレジから
チーン
という音が聞こえた。それから店員のお姉さんは、他にも客がたくさんいるコンビニの店内で俺にこう叫んだのだ。
「骨無しチキンのお客さまぁ!」
ケンカ売っとんのか、こいつ……。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔