ihatov88の小咄集
33 受験戦争 7/5
息子は去年、希望の大学にはわずかに届かず再起をかけて一年予備校に通うことになった。金銭的には厳しかったのだが、彼の志望校に対する熱意に負けて一年での再起を信じることにした。
一生懸命な彼の姿を見て今年こそは行けるだろうと信じていた。模試の結果は堂々のA判定、昨年とは比べ物にならないくらい学力が向上し、本番に備えて体調もメンタルも事前にシュミレーションした。
そして入試本番、この一年に賭けてきた息子はまずまずの表情で帰ってきた。
「大丈夫だろう」
大学の費用もさることながら、予備校の費用も安くはない。親としてもどうしても合格して欲しいと彼のためだけでなく、自分のためにも祈った。
* * *
運命の日が来た。
発表の日、息子は昨日から緊張で眠れずに眼が腫れている。一年を賭けた努力の結晶が今日、形になるのだ。
「やることはやったんだから、思いきって行ってきなさい!」
「――わかった」
そう言って息子は家を出た。
それから三時間後、玄関の扉が開く音がした。すると息子は下を向いてVサインをしている!
「そう、やった!やったじゃない!」
息子は嬉しいのかうつむいたまま何も言えない。それもそうだ、今まで全ての欲望を我慢して一年間頑張ってきたんだから……。
そのがんばりにもらい泣きしそうになった瞬間、息子が口を開けた。
「二浪だよ、二浪――」
私たちの戦いはまだ終わらない――。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔