ihatov88の小咄集
35雨乞いの祈祷師、その2 7/13
(※第5話参照)
地球のどこかのとある村。近年は地球環境の変化で日照りが続き、土地は枯れて痩せ細り、作物が育たず村は存亡の危機に瀕した。
そんな中、一人の男が現れて村を救った。その名はレイン。彼が祈りを捧げれば必ず雨が降るのだ。そして彼は村が干上がると突如現れ、祈りで雨を降らせるとどこかへ去ってゆく。彼は村人から現人神と崇められ、民から様々な進物が賜れた。
レインは巫女のメーアをお供に連れて日照りに困る村を訪れては雨を降らす。彼の素晴らしさはその祈りで降らなかった雨は過去に一度もなく、必ず三日以内に降ることである。まさに神がかりで、彼が現人神と崇められるゆえんなのである。
次の村に立ち寄り、レインは村で一番の部屋を用意されそこに陣取った。しかし今日のレインは機嫌が悪い、こんな時は巫女のメーア以外は出入り禁止となる。
「レインさま、なかなか雨が降らないと村人が……」
「うむ、これはまずいことになった」
メーアに背を向けて何かを抱えながら首をかしげてレインは答えた。
「『まずい』とはどういうとことですか?」
レインはそれを抱えたまま振り向いてこう答えた。
「あかん、ラジオ調子悪い。そうや!ちょっと電池買うて来てーな」
メーアは100円持ってどこにあるかわからない電池を探しに村を出た――。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔