ihatov88の小咄集
42ハンターその2 9/5
「やばいな……」
何ということだ。私は熊と間違えて猟師仲間の中でも一番大柄なマイクを撃ってしまった。確かにあいつは熊くらい大柄だ。そうだ、ヤツは熊に襲われたことにしてその代わりに私がカタキをとってやったというシナリオを作ってしまえばみんなが救われる。極限の状態でこそ良い考えが思いつくというものだ。
よし、気を取り直して大熊をしとめようではないか。そういうことにしよう、ジョン、いいだろ?
「バウッ!」
相棒のジョンは名犬だ。私のいうことを従順に聞いてくれるいいヤツだ。
絶対にしとめなければならないプレッシャーの中私は、熊はマイクの血の匂いに誘われて来るだろうとにらんで、ヤツが出てくるのをじっと待った。
「俺が絶対にしとめるのだ」
と強い意気込みを持っていると敵はやってくるというものだ。
深い森の奥、マイクがいたところに大きな影が動いたと同時に気が揺れる音を確認した。
「今度こそ!」
BANG!
今度は間違いない。銃声が森の中をエコーするのがフェードアウトすると森は静寂を取り戻した。目の前にいるヤツも動きがない。
「マイク、仇はうったぞ!」
私は確認のためジョンを再び森の奥に遣ると、程なくしてジョンはご機嫌で戻ってきた。
「どうしたジョン……、ん?」
なんと、ジョンは再び靴を咥えているのだ。
「だめだな、ジョン。靴は戻してやりなさい」
そういって私はジョンの口から靴を取り上げ、先に咥えてきた靴とあわせて見た。
「おや……」
この靴、どっちも右足ではないか。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔