ihatov88の小咄集
55江戸っ子刑事 11/17
ここは東京のとある下町。行きつけの寿司屋で仕事を終えた江戸っ子刑事の二人がテーブルを挟んでなにやら仕事の話をしている。
「おう、大変でい。事件だ、事件」
「どんな事件ですか、おやびん」
「こないだ見つかった死体なんだが、飲んだコーシーにシソ入ってたそうでぃ」
「シソですか、そりゃ事件じゃねえですか」
「だろ?コーシーにシソ混ぜるったあ、彼奴もなかなかのワルだ」
「ガイシャは気付かなかったんでやんすか?」
おやびんは首を縦にふった。
「そうとも、コーシーはすべてを黒に変えちまうでな。おう、おめえのビールが空じゃねえか。あんちゃん、アサシビール一つ追加」
運ばれてきたビールを飲みながら二人の会話と食事は進む。
「しっかし、シソってえのはどこで手に入れたんでやんすかね?」
「やっぱ農家からだろう、シソは農家で使うと聞いたことがある?」
おやびんはそう言って皿に乗った寿司をつまんだ。
「おやびん、次はなに頼まれますか?」
「そうだな、次はイカで。そう、シソ入りで」
「シソでなくてシソでやんすね?」
「当ったりめえだろ、シソ入ってたら死んでしまうじゃねーか」
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔