ihatov88の小咄集
67中華大食漢、続き 1/31
結局完食してしまったので頼んでいないのに持ってきたおかわりチャーライを頬張る。今日どころか明日もメシいらねーや。さすがに大将は気を遣ってくれたのか、メシよりチャーシューの割合を多くしてくれた。
「肉用意しすぎたね、いっぱいアルから食べてイイね」
なんだ、大将の配分違いかよ。
出されたメシは全部食う。それが生き物のお命いただく者の宿命。勝手に思う私は無理矢理2杯目のチャーライに挑戦する、ゲプッ。
「兄ちゃん、イイ食べっぷりね」
喜んでもらえて何よりです、大将嬉しそう。そんだけイイ顔で見られたらお恥ずかしい。だったらこれも食べなきゃなんないじゃないか。一杯目は自分のハラを満たすため、二杯目は魂入れて中華鍋を振り回してくれた大将の笑顔に応えるため。がんばれ、俺。これは人のために食べているんだ!
というもののとうとう残りレンゲ3杯くらいのところでハラが悲鳴を上げだした。もう一回おかわり来たらそれこそ命に関わるかもしれないのでレンゲで皿の底の文字を隠して椅子の背もたれに体重をかけた。
「ああ、食った食った」
ミシミシっと音を立てる背もたれ。そんなに食ったんか……。
「兄ちゃん、もうイイか?」
そう言いながら慣れた手付きで大将は皿を下げる。こっちもいっぱい、まさに腹一杯食べたのでドヤ顔で大将を見て親指を立てて見せた。
「しかし兄ちゃん、スゴイな?」
「何が、ですか?」
会計を用意している私を見て洗い場越しに大将がこう言ったのだ。
「中国では最後にメシ少し残すね。全部食べたら『お前んとこのメシはそれだけか』ってことなる」
知らなんだ、一杯目でメシちょと残しときゃよかたんだ……。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔