ihatov88の小咄集
71ヒット商品 4/2
インドの料理人であるネルルは地元で腕を磨きフランスへ料理留学した。フランスで学んだ知識と腕を地元でコラボレーションしたくて日夜新作を作るのに試行錯誤を繰り返していた。
インドのソウルフードと言えばカレー、カレーがなければインドを語れない。というよりカレーがなければ世界の歴史も変わっていただろう。とにかくカレーだ。三度の飯はもちろんのこと、三時のおやつだってカレーだ。そうだ、カレーだよ、カレー。
そんなネルルは手軽に食べられるカレーを開発した。
「これや、こりゃ売れるで!」
ネルル渾身の一作。インドのソウルフード、カレーをフランスのお菓子、シュークリームのシューで包み込んだ手頃な料理。名付けてこれが
カレーシュー
だ。三度の飯はもちろんのこと、三時のおやつだって食べられる。そしてパイ生地に包まれているから手も汚れないし外にだって手軽に持っていける。サンドイッチ以来の快挙だこれは。
こうして発案されたカレーシューはインドを中心に世界に広がり大ヒット商品になった。ネルルは札束で風を仰いで得意満面、
しかし
世界でカレーシューが普及しない国が一つだけあった、日本だ。グルメの多い日本人になぜ普及しないのだろう?
「日本人にもカレーパンとかカレーまんとかあるやろがい」
と思いつつ不評の理由が分からないネルルは在インドの日本人を呼んで自慢のカレーシューを振る舞って意見を求めた。
「どうでっしゃろ、アオキはん?」
「そやね、ウマいんよ、カレーシュー。でもやっぱりこれじゃアカンで」
「何がでっか?」
「名前」
ネルルは食べ物は五感で食べるものとこの時初めて気づいたのだった――。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔