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ihatov88の小咄集

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76緊張のゲート 5/15



「健さん、俺は大丈夫かな?めちゃめちゃ緊張するんやけど」
「大丈夫だって、胸を張って、堂々とするんだ」
 ぞろぞろと並ぶ空港の入国審査。友人を連れて到着したはいいがひどく落ち着きがない。無理もない、始めての海外だから。だけどちょっと緊張しすぎと違うか?
「だってよ、俺……。入国拒否とか別室連れていかれたらどうしよう」
「やましいこと無かったらどうってことないって。逆に聞くけどお前やましいこと、あるのか?」
「な訳ねーだろ。だけど俺はこうなった一族を恨むよ」
「そう言うなって!」

   「ちゅぎの方、どうじょ」

呼ばれた彼は先に入国管理官が待ち構える審査台の前に立った。異様なまでの脂汗、見てる方が心配するくらいに。そんなに外国に行くのって怖いのか?

 審査する事数分、彼は返されたパスポートを持って堂々とゲートをくぐった。緊張の解けた友人は元気になった。
「な、大丈夫だったろ?」
「いやー、マジで。名前で拒否されると思ったよ。審査官のおっちゃんも
   『ようこそ韓国へ、ウェルカム・トゥ・コリア』
って言ってくれたよ」
「だろ、いい人いるでしょ?」僕は彼の肩を叩いて笑った「よかったな、入国おめでとう、竹島」
「ドキドキしたぁ、島根君」
 この国の人は名前で入国を拒否することはない?そうです。

作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔