ihatov88の小咄集
78七種類のボール5/30
この世界にはどんな願いもひとつだけ叶えてくれる七種類のボールがあって、冒険家たちは血眼になって探し回っているそうだ。七つの大陸七つの海そして七つの困難を越えて、僕はとうとう6つのボールを手にした。
「あと一つ」
僕のリュックサックには6つのボール、オレンジ色で中に星がある。それぞれ星は一つから六つ。七つ星のボールを見つけたら僕は世界の王になれるのだ。
研究の結果チベットの山奥にボールがあるとの情報をつかみ秘密裏に現地に潜入。あと一つなんだ、他人に知られたらヤバいヤバい。
雪山を越え、吹雪に耐えてようやく到達した岩かげにぽっかりできた洞窟、ボンヤリ光る珠がある。
「コレだ……」
光る珠に手を伸ばした瞬間目の前を横切る手が!
「なにっ!?」
「ハッハッハッ、このボールは俺のものだ!」
何とそこに現れたのは赤いスーツに青のカッターシャツを着たヒョロ長の大泥棒じゃないか?知ってるぞ、お前。めちゃ有名な泥棒やんか。
「返せ!僕が先に見つけたんだぞ」
ここまで来て引き返せない。僕はその球を奪い返そうとするとヤツは球の星を見て、ポイッと僕の方に放ったのだ。
「だ〜めだ」
不思議に思い思わず僕は握りしめた星を数えた。
イチ、ニ、サン、シ、ゴ………………あれ?
「見ろよ、また星五つだ……」そう言ってもう一個のボールを投げた「いっぱいあるのに七つ星だけが見つかんねえんだ」
世界の大泥棒のリュックサックは球の山、だけど七つ星のボールだけがない。
「こーんだけかぶっちまったらやってらんねーよ。お前さん、七つ星のボール持ってねえか?あったら変えっこしてやるぜ」
「……いえ、いいです」
知らんかった。七つのボールじゃなくて七種類のボールやったんか……。
「しかしおめえ運がいいな。今まで同じ球出なかったのか?」
「は、はあ……」
「やべっ、とっつぁんが追っ掛けて来た、あばよぉ〜」
球を探す旅はまだまだ続きそうです――。
作品名:ihatov88の小咄集 作家名:八馬八朔