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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 8 白と黒の姉妹姫

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 会議をしていた部屋を出て自室が同じ方向にあるジゼルとソフィア、それにレオは特に何を話すわけでもなく、並んで廊下を歩いていた。
「レオくんはさ・・・。」
 部屋を出てからしばらく黙っていたソフィアが口を開く。
「レオくんは、もしもわたしが死んだら連れ戻しにくる?」
ソフィアの問いかけに、レオが眉をしかめる。
「お前は殺したって死なないだろ。むしろ俺のほうが先に死にそうだっての。でもまあ・・・もしそういうことが起こって、ソフィアに会いたくなったら、人様に迷惑かけないようにこっちから会いにいくさ。」
 会いに行きたくなるかどうかはわからないけどな。と冗談めいた口調で付け加えるレオの言葉を聞いて、ソフィアはうーん。と唸った。
「それはうれしいような、うれしくないような・・・。」
「じゃあ、どうしたら満足なんだよ。」
「わたしの事を忘れずにいてくれて、レオくんが幸せに暮らしてくれたらいいかな。もしレオ君が先に死んじゃったら、わたしもそうすると思うし。」
「お前、そんなグレンみたいな・・・。」
 そこまで口にして、レオは、油の切れた歯車のような動きでジゼルの方を向く。
「・・・?何よ。」
「いや・・・その。もう泣かないのか?」
「泣かないわよ。グレンにも幸せになれって言われてるし、いつまでもメソメソしていられないのよ。・・・ああそれと、あたしにはグレンに会いに行く気もこっちに引っ張り戻す気もないわ。あたしの考えもソフィアと同じよ。」
「あ・・・そう。ならいいんだけどよ。」
 以前、ジゼルの前でうっかりグレンの話をして大泣きされた経験のあるレオは、ジゼルの言葉を聞いて、ホッとした表情で胸をなでおろした。
「ああ、そうだレオ君。しばらく離れ離れになっちゃうけど、その前にちょっと話しておきたい事があるんだ。」
 そう言ってレオの手を取ってにっこりと笑うソフィアは一見普段と変わらないように見えたが、レオには今の彼女の笑顔は普段の彼女の笑顔とはどこか違っているように見えた。
「・・・あの・・・ソフィアさん?何か怒っていらっしゃる?」
「んー・・・・・・・?怒られるような事をしたっていう自覚があるのかな?」
「え・・・と・・・。」
 レオがジゼルに助けを求めるように視線を送るが、ジゼルはそっぽを向いてしまっていて、どうやら助ける気はないようである。
「レオ君は、どうしてグレンの遺言を知ってるのかな?」
「ジゼルに聞いたんだよ。逆にソフィアはどうして知ってるんだよ。」
「ジゼルちゃんに聞いたからだよ。」
「じゃあ同じじゃないか。」
「ジゼルちゃんは昼間にそういう話、しないよね。人前で泣き言を言うの嫌いだし、オンとオフの切り替えはしっかりしているからね。」
 そのセリフと共に、それまでニコニコと笑っていたソフィアの目が細く鋭く開かれ、レオを見据える。
「・・・・・・それは、その。いや。でも別にやましいことはしてないって。ほんとに。」
「やましくないなら、なんでそんなに汗をかいているのかな?」
「お、お前が変なプレッシャーをかけるからだろ。」
「それに、もう泣かないのかって。どういうことかな?まるで前にジゼルちゃんが泣いている所を間近で見ているみたいだよね。・・・ねえ、ジゼルちゃんの泣き顔を夜に近くで見ていたって、どういうことなのかな?」
「お・・・う・・・ジゼル?」
 ソフィアに圧倒されながら、レオが再びジゼルに助けを求める視線を送るが、ジゼルはレオの視線に申し訳無さそうな表情で応えると、一言本当に申し訳無さそうに小さく呟く。
「・・・その。ごめん・・・バレた。」
「バレたじゃないだろ!」
「『バレたじゃないだろ!」じゃないよ!その話を聞いてから一月、いつレオくんのほうから事情を説明してくれるのかと思って待っていたのに、全然話してくれないし、まさかレオ君、バレていなきゃいいやとか思っていたんじゃないよね?」
「だから、別に俺とジゼルはやましいことは全然ない!ただ・・・ジゼルが辛いっていうから、話を聞いていただけだ。でもお前に話すと話がややこしくなるから話さなかっただけだろ。俺は神に誓ってジゼルとやましいことなんてしてない。本当だ。」
「・・・その結果どうなるか本当にわかってない所がアレクシスくんよりも質が悪いよ。ユリウス君並だよ。」
「は?」
「そんな時に優しくされて、優しくしてくれた相手のことを全然気にしない女の子がいると思ってるの?」
 そう言ってレオを睨んでいるソフィアの目に燃えているのは、嫉妬の炎ではなかった。どちらかと言えば、無神経なレオに対する義憤のような炎。
 そのソフィアの目を見て、レオは以前キャシーに言われた言葉を思い出した。
 
 『ソフィアじゃないって。まあ、もう一人、レオに思いを寄せている女の子が居るっていうわけよ。もちろん私じゃなくてね。』

 レオが恐る恐るジゼルのほうを見ると、ジゼルはレオがこれまで見たことがないくらい真っ赤な顔をしてレオから顔をそむけて上を向いた。
「ジゼル・・・さん?」
「な・・・なによ。」
「・・・・・・そういう事?」
「ま、周りにろくな男がいないんだから仕方ないでしょ!別にわたしはソフィアほどレオの事が好きなわけじゃないわよ!消去法よ!消去法!他に手頃な男がいないだけよ!」
「あー、そうなんだ。・・・それなら譲らないよ。」
「あ・・・違うのソフィア。そういうつもりじゃないのよ。」
 ソフィアの言葉を聞いたジゼルが慌ててソフィアにすがりつくようにして言った。
「というか、俺の意思はどうなってるんだよ。譲るとか譲らないとか、俺は物じゃねえぞ。」
「でも別にレオくん、ジゼルちゃんのこと嫌いじゃないでしょ?」
「そりゃあ、付き合いも長いし、嫌いじゃないけどさ。」
「嫌いじゃないどころか好きでしょ。」
 さらりと感情のこもっていない声で言い放つソフィアに対して、レオは挙動不審と言っても尚足りないほどの動揺を見せる。
「・・・え・・・いや。ほら、俺はジゼルの性格がキツイ所が苦手だって何度も・・・。」
「苦手な人は、ジゼルちゃんがセロトニアからイデアに移る時に泣いたりしないよ。」
「いや・・・あれはまだ子供だったからで。」
「それにセロトニアを出て、わざわざイデアまで職探しにも行かないよね。だってセロトニアからだったら、アレクシス君のいたグランパレスのほうが近いんだから、コネをつかって仕事を探すならグランパレスのほうがよかったはずだよ。・・・ああ、でもグランパレスにはクロエちゃんがいたからそっちはそっちで問題があったのかな?」
「クロちゃんとはジゼル以上になんでもねえよ!」
「別にそれはいいんだ。レオくんがジゼルちゃんの事好きなのは昔からわかってたことだし。あのランドールおじさんの息子だし、気が多いのはわかってたことだし。ただ、正直言って、その逆が今までなかったから、ちょっと戸惑ったっていうのはあるかな。」
 そう言って、ソフィアがレオの手を離す。
「わたしはこの後、レオくんにとってキツイ話をするから、逃げたければ魔法を使って時間を止めて逃げてもいいよ。」