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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 8 白と黒の姉妹姫

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 代表戦当日。
 アリスの目論見通り、手紙を読んで激昂したクロエは代表を譲らず、また南アミューの要とも言えるヴォルカン将軍もクロエ同様代表の座を他の人間に譲ろうとはしなかった。対して北アミューの代表は大方の予想通りのアリス。それにもう一人はシエルだった。
「なんで俺なんだよ。テオがやりたそうにウズウズしてただろ。」
「やりたそうにウズウズしてる人を代表になんてしたら被害が大きくなるでしょう。あの人は腐ってもグランボルカ皇帝なんですよ。アレクと違ってコントロールが上手いとは言え、うっかり本気を出されでもしたら南北統合どころじゃなくなってしまうわ。」
「・・・まあ、そりゃあ確かに。」
 ジュロメでの殲滅戦。その時にテオが見せた魔法は圧倒的な威力を以ってゴブリン達を焼き払った。その魔法の威力はシエルが幼いころに見た全盛期のリシエール王すら凌ぐ威力を持っており、何かの間違いであれが出てしまえば、アリスの言うとおり南北アミューの統合どころではない騒ぎになるかもしれない。
「あなたならあの位の相手に殺されるような事はないだろうし、逆に殺すようなこともないでしょう。」
「まあ、確かに。それで俺はどうすればいいんだ?勝てばいいのか?負ければいいのか?」
「どっちでもいいわ。私とクロエでこの代表戦自体をノーゲームにするから。」
「それで話がまとまるのか?」
「まとめるわ。」
 嘘を付いているわけでも、強がっているわけでもない様子のアリスを見てシエルは眉をしかめた。
「へえ、そんなにすごい試合を見せられるってことか?お前はともかく、妹のほうにそんな実力があるとも思えないんだけど。」
「ああ見えてクロエも本気になるとすごいのよ。私が本気でぶつかれるのはクロエだけだもの。」
「ふうん。でもそんなことできるなら最初からこんな茶番の試合組まなけりゃいいだろ。」
「試合は必要なの。私とクロエの試合を見た後で、あの二人が『戦いたくない』って思うように仕向けるつもりなのだから。」
「じゃあ第一試合でそれをやればいいだろ。」
「そうね、それでもいいんだけど・・・。」
 シエルに対しては比較的ズケズケと物を言うアリスにしては珍しくその先の言葉を言うのを躊躇する。
「なんだ、何か言いづらい理由でもあるのか?」
「・・・いえ、一度シエルが本気で戦っているところを見てみたいと思って。」
「一発殴っていいか?」
「嫌に決まってるでしょ。せっかく出来た恋人にいいところを見せられるチャンスなんだからしっかり戦っていいところ見せなさい。・・・とは言え、意外だったわ。多少仲良くなって帰ってくるだろうとは思っていたけど、まさかオデットと恋人になるとは想像もしていなかった。」
「まあ、お互いアリスのお供で苦労してるから素直になったら意気投合することのほうが多くてな。そういう意味ではアリスには感謝しないといけないと思っているぞ。」
「嫌な感謝のされ方。まあ色々と面倒なこともある子だと思うけど、オデットのことよろしくね。」
「なんだよ急に改まって。」
「オデットは私の親友なの、だから・・・もしも泣かせたりしたら大変なことになるから覚えておいてね。」
「改まってそういうこと言うのやめてくれないかな。」
「傷つけたら許さないニャー!シエルなんか絶交だニャー!」
「完璧な声真似でメイ姐さんの真似するのやめてくれ!」
「シエルさんって、アリスと仲良さそうですよねー。」
 いつの間にか、二人の後ろにオデットが立っていてシエルを白い目で見ながら完璧な棒読みでそう言った。
「いや、別にアリスと俺は仲良くなんてないぞ。なあ。」
「ええ。シエルと仲がいいなんて思われるのは心外よ。」
「そうだぞ。俺にはオデットがいるし、アリスにはユリウスがいるんだからな。」
「そう・・・ね。そうよ、オデット。私にはユリウスがいるんだから。」
 そう言って笑うアリスが、答えを出すまでにほんの一瞬迷ったのをシエルは見逃さなかった。
(テオと仲がいいとは思ってたけど、やっぱりそういうことか。)
 シエルとしてはアリスの心変わり自体を責めるつもりは毛頭なかったが、ユリウスの兄のような存在である彼としては今後何らかのフォローをする必要が出てくるだろう。
(それも折り込み済みでオデットを俺にあてがったとは思いたくないが。)
「どうかしましたか?」
 シエルがちらりと向けた視線に気づいてオデットが首をかしげる。
「いや。俺の恋人は今日もかわいいなと思ってさ。」
「・・・明日は雨でしょうか。」
「かもしれないわね。」
「何で恋人を誉めてそこまで言われなくちゃならないんだよ・・・」
「それはそうと、そろそろ準備をしてほしいと南エミューの代表団・・・というか、クロエさんのほうから要請がありました。二人とも準備をお願いします。」
「はあ・・・クロエったら相変わらず気が短いんだから。」
「いや、あの文面じゃ怒るだろ・・・まあ、俺の方は適当にやるからそっちもケガするなよ。相手に怪我をさせるのもなしな。」
「あら、シエルが私の心配するなんて明日は本当に雨かもしれないわね。」
「言ってろ。じゃあ、俺は準備があるから一回荷物の所まで戻るぜ。」
 そう言ってシエルはその場から立ち去り、後にはアリスとオデットだけが残された。
「・・・いいんですか?本当のこと言わなくて。信用していないって言ったって、もうそろそろ話してあげてもいいじゃないですか。」
「ふふ・・シエルはうすうす気づいているから大丈夫よ。」