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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 8 白と黒の姉妹姫

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 そう言ってシエルは書状をオデットに渡す。そしてその内容を読んだオデットは先程のシエル同様絶句した。
「これ・・・絶対ロチェス様の文章じゃないですよね。」
「明らかにアリスだろうな。作・アリス、代筆・ロチェスってところか。」
「でもなんだってこんなに挑発的な文章を書いたんでしょう。確かにアリスは性格がゆがんでいるところもありますけど、ここまで露骨に相手を挑発する人じゃないのに。」
「いや、挑発の度合いも相手によるだろ。俺に対して挑発することは多いけどオデットに対してはほとんどしないし、テオに対してだってほとんどしないからな。でもまあ、今回のこの文書はオリヴィエが嫌と言えないようにするためだろう。これで断ったら北と南で完全に全面戦争になってしまうし、そうなればいくらエド達がいたとしてもオリヴィエにはほぼ勝ち目がない。エド達はあくまで寄騎でしかないからどこまで戦ってもらえるかは不透明だから南の将軍は重要なところには置こうとしない。そうなると寡兵の南は圧倒的に不利だ。」
「でもそれならここまで挑発する必要もないんじゃないですか?」
「狙いが代表戦にするって言うことだけならな。俺はこの手紙の狙いはオリヴィエを引っ張りだしてロチェスと戦わせる所にあると思う。だからオリヴィエが3対3の代表戦と言い出せないような挑発をして、結果として2対2プラス1対1という条件を承諾させた。本当に恐ろしい女だよ、アリスは。」
 そう言ってシエルはやれやれと首を横に振った。
「じゃあ・・・この手紙も、もしかしたら。」
 オデットが懐から取り出した封筒には宛名の所にクロエ・グランボルカと書かれていた。
「・・・南アミュー代表の一人をクロエ殿にする為の手紙だろうな。そしてこっちの代表の一人は間違いなくアリスだ。」
「もう一人はシエルさんかテオさんですよね。北アミューって兵士の数は多いですけど、ほとんどが弱卒ですし、いわゆる将が少ないですから。」
「オデットかもしれないぞ。イーブンにしないとロチェスとオリヴィエの対戦に持ち込めないんだから。例えば俺やテオが勝ったらアリスが負けなきゃいけなくなるけど、あいつはおとなしく妹に負けるような女じゃない。」
「いえ、さすがにアリスでもそこまでは・・・。」
 しないだろうとは言い切れないのがアリスの恐ろしい所だ。
「・・・俺、やっぱりジュロメに残ればよかったかもしれないな。」
「もういっそこのまま南アミューに残っちゃいましょうか。」
「それもいいな・・・。」
「さすがにそれはちょっと。二人に残られてしまうと私やお姉様あたりが使いに出されそうですし。ああ、でもそうなれば稀代の軍師であるアリス殿とゆっくりお話することができるのか。それはそれで魅力かもしれませんね。」
「・・・エリカ。気配を消して後ろにつくのやめろって昔から言ってるだろ。」
「逆に非戦闘員の私に簡単に後ろにつかれてしまうことのほうが問題でしょう。シエルさんこそもう少し鍛錬して下さい。」
 シエルの抗議の声にも全く悪びれること無くエリカがそう言って二人の横に並ぶ。
「書状は覗かせてもらいましたけど、色々と面倒ですね。最初からオリヴィエ様達の一騎打ちにしてしまえばいいのに。」
「それを南の将軍がよしとすると思うか?あのオッサンはオリヴィエに対してかなり過保護と見たぞ。」
「ああ。確かに。ヴォルカン殿はヘクトールと同じくらい過保護ですからね。まあ、それを考慮に入れると、南はクロエ様とヴォルカン殿。それにオリヴィエ様ですね。」
「北はアリスとテオ、もしくは俺。それにロチェスか。テオはエドと似ている所があるからわざと負けるっていうのができなさそうなのがなあ・・・。」
「まあなんにせよ、アリス殿の狙いが本当は何処にあるのかが問題だと思いますけどね。」
「アリスの本当の狙い、ですか?」
「ええ。私はアリスさんのことをよく知りませんけど、話に聞く限り、シエルさんごときに考えを看破されるような簡単な人だとは思えないんですよ。」
「それは確かに・・・。」
「なあ、二人共なにげに言っている事が酷くないか。」
 シエルが不満の声を上げるが、エリカは構わずに話を続ける。
「これはあくまで私の考えなのですが、アリス殿はオリヴィエ様とロチェス様を戦わせずに済ませるつもりなのではないでしょうか。二人共まだまだ幼いですし、その二人が本気で殺しあうようなことをさせるとは考えにくいんですよね。最悪二人共死んでしまうこともありえますし。」
「北が勝つか南が勝つかは最初の2戦で決めるってことか?」
「おそらく。ただ、どこで勝負がついてどちらが勝つにせよ遺恨が残るんです。オリヴィエ様が勝てばロチェス様は処刑か、良くて放逐。逆でも同じでしょう。とりあえず均衡の保てている現状の小康状態を破ってまでどう収めるつもりなのか。現役最強の軍師であり将軍でもあるアリス殿の計略がどう展開していくのかすごく楽しみです。」
「まあ・・・」
「収める気がないっていう線もないでは無いでしょうけど・・・。」
 アリスの計略を想像して期待に目をかがやかせるエリカとは真逆の反応でシエルとオデットは盛大なため息をついた。