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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 8 白と黒の姉妹姫

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「別に自分の身くらい自分で守れるわよ。それに誰をつけるの?事情を知っている人間はもう大体役目が振り分けられているでしょう。大体、全然違う部隊の人間があたしの護衛になんてついていたらあからさま過ぎて逆に狙われるわよ。」
「ああ。でももう一人事情を知っている人がいるだろう?・・・いや、二人かな。」
「?」
「カーラとヴィクトル。あの二人なら元々叔父上の配下だし、ジゼルと一緒にいても不自然じゃない。」
「ああ、確かにその二人ならジゼルと一緒に居てもおかしくないかも。」
「でもあの二人は曲がりなりにも衛生兵の大隊長と、全軍の指揮系統を担う参謀長でしょう。そんな二人をあたしの護衛につけたら指揮がとれないでしょう・・・。」
 そう言って護衛をつけられることを固辞するジゼルを見て、リュリュが訝しげな目でジゼルを見ながら口を開く。
「・・・姉様。やはり単騎でなにかするおつもりだったのですな。」
「え?えー・・・そんなことないわよ。ええ、全然考えてない。」
 リュリュの言葉にジゼルがしどろもどろになりながら答えるが、その視線はあちらこちらをキョロキョロと泳いでいて明らかになにか隠し事をしている態度だった。
「今回はエドにしても姉様にしても、基本的には本陣に居て頂く。つまり、指揮の中心です。そこに一緒に居て指揮が取れないなどということになるわけがないではないですか。どちらも小隊、中隊単位の指揮などとりませぬからな。」
「う・・・そりゃあ、ちょっとは考えていたわよ。たまに後ろを牽制したり、前に敵が居るなら馬を走らせて殲滅したりとか。誰だって、そういうことはするでしょう?」
「一武将ならともかく、姉様のような立場の人間はそんなことはしませぬ!」
 口をへの字にして睨みつけるリュリュの迫力に気圧されて、ジゼルがたじろぐ。
「今までは黙認しておりましたが、立場が変わった以上、これからはリュリュも全力で姉様を見はりますゆえ、お覚悟を。」
「はい・・・。」
 姉妹のそんなやりとりを見ていたユリウスが手を挙げて口を開く。
「ただ、リュリュの護衛を厚くしたほうがいいというジゼルさんの意見ももっともです。鍵云々ではなく、戦闘に向かないリュリュは守ってあげる必要がありますから。」
「ユリウス!貴様まだリュリュを子供あつかいするか。」
「いや、そういうわけじゃない。僕自身が君を大切に思うからそう言っているだけだ。」
「む・・・ぅ。そうか、ユリウスはリュリュは大切か。うむ。それなら、まあその・・・守られてやっても・・・のう。」
 いつものようにバカにしている様子ではなく、真摯な瞳でリュリュを見るユリウスにの表情を見て、リュリュは、ごにょごにょと言葉を濁らせて顔を赤らめる。
「君が大人になるまでは僕達が守ってあげるから安心して甘えてくれ。」
「やはり子供扱いではないか!」
 先ほどまでとは違う理由で顔を赤くしたリュリュが声を荒げる。
「え・・・なんで怒るんだ?」
「知らぬわ阿呆!」
「ユリウスくん。誑すかいじるかどっちかにしてあげて。リュリュちゃんも疲れちゃうからさ・・・。」
「え・・・?誑す?いじる?」
 全く自覚のないユリウスは、ソフィアの言葉の意味を図りかねて首をかしげた。
「前から思っていたけど、ユリウスってアレク以上だよね。」
「アレクはわかってやっていた節があるからもう少し気遣いができていたけど、ユリウス王子はねえ・・・リュリュ様もこれは苦労するわ。」
 打ち合わせを終えて戻ってきたクロエとエドの二人がユリウスの方を見ながらヒソヒソとそんな会話をしている。
「んんっ!・・・それで、レオ、クロエ。どうするか決まったのかい?」
 アレクシスがバツが悪そうにひとつ咳払いをして、探索の概要をつめていた二人に話を振る。
「ああ。まず、分担だが俺がイデア方面への誘導をする。こっちにはリュリュと、リュリュを守りたくてうずうずしているユリウスを連れて行こうと思う。イデア方面は情勢が比較的安定しているっていうのもあるし、城や街の規模。それに防衛設備から考えても、リュリュにくっついてくる総大将のアレクが陣取るならイデアのほうがいい。」
「逆に、前の反乱で撃ち漏らしたデミヒューマンが散発的に現れて、情勢の安定していないマタイサ方面には、私の隊が向かいます。偵察と共に、殲滅を行う必要もありますから、早く動けて、十分な殲滅能力のある隊、つまりソフィアの隊を連れて行きたいと思っています。そうすると、必然的にソフィアの護衛対象であるエドにもこちらに来てもらうことになるわ。」
「わかった。じゃあ、リシエール騎士団もこっちかな。」
「それなんだけど・・・リシエール騎士団はできれば二手に分けたいの。エドとユリウス王子は信用しているけど、カズンの件もあるしリシエール勢を固めて大勢力になられると、色々と面倒が起こりかねないから。同盟国ではあるけれど、彼我の戦力はなるべく拮抗させておきたいの。」
 クロエが申し訳無さそうな視線をエドとユリウスに向けるが、それについては二人も思う所があったので、二人共すぐに頷いた。
「そうだね、今は抑えになりそうなヘクトールもシエルもいないしね。じゃあ、リシエール騎士団は2つに分けて私とユリウスで半分ずつ受け持とう。」
「わかりました。」
「・・・そうか、クロエもエドもマタイサか・・・。」
 概要を聞き終わったアレクシス複雑そうな表情でそう漏らした。
「寂しい?」
「そりゃあ・・・ね。」
「なら、あたしがエドと代わればいいんじゃない?」
 ジゼルがそう言って手を挙げるが、アレクシスは即座にそれを却下する。
「ジゼルは見つけたデミヒューマンを深追いしそうだからだめだ。それに、リシエール騎士団の件もあるからね。」
「言ってみただけよ。じゃあ、後詰めは適当に振り分けるとして・・・あとは何かある?」
 ジゼルの問いに、エドがアレクシスとクロエに視線を送り、三人が頷き合う。
「・・・一つ、皆に聞いておいてほしいことがあるんだ。・・・実は私、婚礼の日にバルタザールと会ったんだ。」
「・・・・・・はぁっ?」
「えーっと・・・?」
 突然のエドの言葉にジゼルとソフィアは次の言葉が出てこない。
「姉さんが少し落ち込んでいたようなので、何かあったのだろうとは思っていましたが、そんなことがあったんですか。」
「うん・・・。実は私はそこで、バルタザールからアレク達のお母さんの形見の指輪を受け取ったんだ。それで、話をしてみた私の印象なんだけど、私たちはもしかしたら勘違いさせられているんじゃないかなと思って。」
「まさか、バルタザールが敵じゃないなんて言い出すんじゃないでしょうね。」
「敵だけど、敵じゃない・・・というか。私やユリウス、それにリシエールのみんなからしたら多分敵なんだ。敵なんだけど・・・アレクやリュリュ。それにアリスやクロエの心配をしていたあの人は、皆にとって敵なのかな?・・・と思って。」
「どういうことよ、エド。」