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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 8 白と黒の姉妹姫

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「おお、前髪のお嬢ちゃん詳しいな。じゃあ、その情報に肉付けとして現状を話そう。国内を二分している勢力、北の王と南の女王は双子でな。実はどちらも王の証である万物創世の魔法もそれを制御するための魔法も継承してはいない。魔法を持つ者の任意、もしくは魔法の所有者の死によって次世代に引き継がれるその魔法は現在行方不明。二人が生まれる前に何者かにさらわれた長姉。もしくはその下の姉に引き継がれているんだろうっていうのが定説だ。で、そんな王の資格を正式に引き継がれていない二人をそれぞれのとりまきが好き勝手に担ぎあげて、家中が分断しちまって現在の内戦に至る。というわけだ。」
「なんだか不幸な話だなあ。・・・その二人って、多分相当若いんですよね?」
 エドの質問に、ランドールがうなずく。
「ああ。リュリュよりも年下だ。」
「・・・・・・そうですか。」
 幼い権力者がその権力を狙う人間の傀儡にされてしまうことは歴史上ままあることではあるが、そうなってしまった権力者は大抵不幸な最後を遂げる。
「お二人はなぜ南アミューに?」
「ああ、路銀が尽きてどうするかと思っていたところを南の女王に拾われてな。本当はすぐにグランボルカに戻ってテオを探すか、アレクの所に行くつもりだったんだが、エリザベスが女王を放っておけないと言い出して、留まって力を貸しているというわけだ。」
「放っておける訳ないだろ。あんな小さな子が辛いのを我慢して強がっているっていうのに、あんたは放っておけっていうのかい!?」
「はいはい。『出会ったころのアリスみたいで放っておけない』だろ。わかってるって。・・・まあ、こんな感じで見事に感情移入しちゃっていてな。たしかにエリザベスの言っていることもわかるんだ。城に来たばかりのアリスは『私がしっかりしないと追い出される、クロエのぶんまで頑張る。』って感じで、今の南の女王と重なる部分も多い。こいつはそういうのを放っておけないんだろう。」
「母さんらしいわ。・・・でも、安心した。母さんは母さんのままだったのね。」
「あたりまえじゃないか。あたしが、誰かに操られたりすると思うかい?」
「それは心配していなかったけど、父さんのこともあったから、陛下と同じように冥界との扉を開こうとしてるんじゃないかって、ちょっとだけ疑ってた。」
「おや、母親を疑うなんて、酷い娘だねえ。」
「五年も放っておいた母親に言われたくないわ。」
 そう言って顔を見合わせると、エリザベスとクロエは同時に笑い出した。
「まあ、とにかくそういう事情でお世話になっているのさ。グランボルカの軍であってもあたしとランドールが口利きすれば街に入れるから、一緒に来ておくれ。」
「休息を取らせていただけるのはありがたいのですが・・・一つ確認をしておきたいことが。」
 話を聞いていたエリカがおずおずと手を挙げて口を開く。
「もしかして、南の女王の旗色はかなり悪いのではないですか?それで、我々を南の女王の軍に組み込もうとしている。そんな気がしてならないのですが。」
「・・・前髪のお嬢ちゃん。俺達がそんなセコいことをすると思うか?」
 エリカの言葉に気分を悪くしたのか、ランドールの目が鋭さを増した。
「ご気分を害されたのであれば謝罪致します。しかし、私はすでに一度ミスをして主人を窮地に追い込んでしまいました。これ以上主人を危険な目に合わせるわけにはまいりません。」
 前髪の隙間から覗くエリカの真剣な眼差しを見てランドールが肩をすくめる。
「お嬢ちゃん、あまり腕に自信があるようには見えないけど、軍師かい?」
 値踏みするようなランドールの視線にひるまず、エリカが頷く。
「・・・はい。」
「じゃあ、嘘をついても現状を見られたら見破られちまうだろうな。嬢ちゃんの言うとおり、南はかなり旗色が悪い。北に付いている宰相がかなりずる賢くて、直接的な戦闘以外でも兵が籠絡されていて、勢力が大分削られちまってる。」
「でも、それで国がまとまるなら、それでもいいような気がするんだよねえ・・・。どっちにしても後ろ盾になっている人がいるわけでしょう?」
 ソフィアがそう言って首をかしげるが、エリカは強く首を振る。
「国をまとめていい人間、まとめてはいけない人間というものがいます。お二人が南につくのはおそらく、北の王・・・この場合実質的な王という意味で宰相を指しますが、宰相がこの国をまとめるべきではない。そう考えていらっしゃるからではないですか?」
「・・・嬢ちゃん、名前を教えてもらえるか?軍師様相手に嬢ちゃんって呼ぶのはちょっと気が引ける。」
「失礼いたしました。私はエーリカ・クロンヘイムと申します。エリカで結構です。」
「クロンヘイム!どうりで若いのに堂々としているわけだ。・・・リシエールを支えたクロンヘイムの知と、ソフィアちゃんとエリザベスの力。それにエドの権威。これがあれば行けるかもしれないな。」
 ランドールはそう言って襟を正すと跪いてエリカとエドに頭を下げる。
「・・・エーデルガルド様、クロンヘイム殿。南の女王オリヴィエを立てることは、グランボルカ、ひいてはリシエールのためにもなること。是非ご助勢いただきたい。」