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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 8 白と黒の姉妹姫

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 廊下を走ってくる何者かの気配を感じつつ、ジゼルは自室のソファーで紅茶を口に運んだ。
「・・・まあ、考えるまでもなく、どうせアレクなんだろうけど。」
「何が兄様なのですか、姉様。」
 一緒に紅茶を飲んでいたリュリュが尋ねるが、ジゼルは「なんでもない」と首を振った。
「ジゼル!エドとクロエからの使者が来たって聞いたけど!」
そう言って部屋に飛び込んできたのはジゼルが予想したとおり、息が上がり汗だくになったアレクシスだった。
「はいはい、来たわよ。今は南エミューに居るって。ランドールとエリザベスも一緒だそうよ。エドったらどうやら本当にあの二人を仲間に引き入れたみたい。恐れ入るわ。」
そう言ってジゼルは手元に置いてあった書状をアレクシスに手渡した。そして食い入るようにその書状を読んだアレクシスの目に涙が浮かぶ。
「二人とも無事だったんだ・・・よかった・・・。」
「そこまで心配していたのあんただけよ。あのユリウスだって、『大丈夫でしょう』って言って笑っていたのに。」
「いいんだよ。夫が妻を心配するのは当たり前のことなんだから!」
「自分で決められなかったくせに何が妻よ。バカじゃないの?」
「はっはっは。ジゼル姉様もソフィアとエドの心配をしておられたでは・・・イタタタ・・・なにふるんふぇふか」
 余計なことを言いかけたリュリュの頬をジゼルがひっぱり、リュリュの頬がむにゅっと伸びる。
「余計なことを言うからよ。・・・まあ、何にしても、しばらくは戻ってこないみたいだし、こっちはこっちで・・・」
「というか、レオがジゼルもソフィアを心配して泣いていたって言っていたんだけど。」
「あ、それはリュリュも聞きましたぞ。」
「・・・あいつ、後で締めるわ・・・。」
舌打ちをしながらそう言い放つジゼルの顔を見て、アレクシスとリュリュは口元をひきつらせた。
「ま・・・まあ何にしてもエドもクロエもソフィアも無事でよかったよ。」
「そ、そうですな。は、早く戻ってきて欲しいものです。」
色々な意味で。とリュリュは言わなかったが、リュリュの言わんとしていることはアレクシスもよく理解している。
「ああ。あの三人は早くなんて戻ってこないわよ。アミューの内乱に一枚噛むそうだから。」
「・・・はぁ?」
「二枚目。ちゃんと読みなさい。」
ジゼルにそう言われてアレクシスが手に持っている書状に視線を落とすと、確かに近況を報告する手紙の他にもう一枚紙がかさなっていた。
「・・・・・・えっと・・・これって、非常にまずいんじゃないか。」
「まずいわよ。南が勝てばいいけど、北が勝ったりしたらグランボルカからの内政干渉、しかも皇子の妃が二人も絡んでる。なんて言いがかりをつけられてアミューと戦争になっちゃうかも。・・・まあ流石にエド達もバカじゃないから、グランボルカとリシエールの旗を振りながら喧嘩をふっかけるようなことはしないだろうし、そうそうバレないとは思うけどね。」
「・・・何とか連れ戻せないかな。」
「無理でしょ。二枚目を読んだならわかると思うけど、どうやらエドはもちろん、あの中ではどちらかと言えば抑えに回るはずのクロエまで南のオリヴィエと意気投合しちゃったみたいだしね。まあ・・・でも南が勝ってくれれば、リシエールを攻める時には援軍や補給もお願いできるだろうし。それにあの国をつつくと、ちょっとおもしろいことになるかもしれないわよ。」
困惑顔のアレクシスとは正反対の余裕のある笑顔を浮かべて、ジゼルは紅茶を一口、口に運んだ。
彼女の尻の下には誰にも見せていない書状が一枚。あえてアレクシス宛ではなく、ジゼル宛にした所に『彼女』のいたずら心やアレクシスに対する意趣返しのようなものが垣間見え、ジゼルはその書状をアレクシスにもリュリュにも見せないことに決めていた。
そう、薄情にもアレクシスがすっかり忘れていた『彼女』の意思を汲んで。