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萌葱色に染まった心 2

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 ブレーキを効かせ、徹は車体を反転させた。すると、予想通り追いかけてきた男がライトの明かりに浮かび上がる。次の瞬間、徹はその男に向かってバイクを加速した。予想外のことに男は一瞬怯んだ。徹はそのすぐ隣を通り過ぎると、闇に消えていった。
「まあいい。この次に会ったときには、あの女の居所を吐かせてやる」
 男は徹の去っていった闇を見据え、そうつぶやいた。

 追っ手は――こない。徹はホッと胸をなで下ろして国道を疾走していった。ライトの端に人影が映る。
 またさっきの奴か。まさか、先回りされた?一瞬そう思ったが、どうにも違うようだ。見覚えがある。あのカーキ色のパーカーにベージュのセーターは――昼間の女だ。一人ではないようだ。だが、なにか怯えている。徹はブレーキをかけ、その女の隣で急停止した。少女の背後には黒服の男が立っていた。彼女が怯えているのは、奴のせいか。
「こっちも取り込み中か?」
「あ、昼間の」
 女が徹の事に気づいた。
「なんだ貴様は、邪魔をするのなら、まずお前から喰ってやる!」
 少し離れたところで男の声がした。暗くて見えない。だが、尋常ではない気がした。ひょっとして、さっきあった男の仲間か。
「女、死にたくなければ乗れ!」
 徹はとっさにそう叫んだ。女はうんと頷くと、さっとバイクに跨り、徹にしがみついた。少し窮屈だが、致し方ない。ヘルメットがないから、警察にだけは会わないように心の中で祈りながら、徹はアクセルをふかす。バイクが豪快なエンジン音を上げる。クラッチを利かせたまま、素早くギアチェンジすると、バイクは男が襲いくるよりも速く急発進した。
 あまりにも急な加速のため、落ちそうになるところだったが、ふたりはどうにか踏ん張った。バックミラーで見る限り、追っ手は来ない。このまま振り切れるといいのだが……。人知を超えた謎の男の出現に戸惑いながら、徹は祈るような思い出バイクを駆る。行き着いた先は岬の灯台だった。
 もう夜も暮れている。現金をあまり持っていないし、下手に動いては奴らの標的になるだろう。幸いこの灯台には今こそ人は寝泊まりしていないが、昔は住み込みで明かりを管理していたのだろう。その名残か、建物の中で夜露はしのげそうだ。
「今日はここで休むとしよう」
「えっここで?」
「何か文句でも?」
「……ないです……」