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萌葱色に染まった心 2

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 言うが早いか、反論の気を与えずに徹が出発した。少女はバイクのナンバーを控えるのが精一杯だった。

 まったく。何だって俺は人助けなんかしてしまったんだ? 知らない人を助けて何の特になる? 徹は自問した。関係ない。そう。俺には。なのに、なんで。答えは出てこない。そのもどかしさにイライラしながら徹は海沿いの国道を駆けていく。
 日が沈んでいく。徹はバイクの明かりを点灯した。道なりに進み、カーブを曲がったところで、ライトに人影が映った。
 危ないと思うよりも先に、体が反応していた。車体を斜めにし、ハンドルを切ってどうにかよける。バランスを崩して少しよろめいたが、他に車やバイクが走ってなかったのが幸いした。ブレーキをかけ、減速すると体勢を立て直す。
「バカやろう。危ないじゃないか」
 徹は叫んだ。振り返った先には――誰もいない。いつの間にか、夜の帳が下りていた。とはいえ、まだ薄暗い程度だから、側にいれば見逃すはずはないのだが……。幻を見たのだろうか。いや、違う。
「君はあの女を助けたんだって? あの組織の唯一の生き残りを」
 声は背後からした。
「な、何者だ!」
「何者だはないだろう?」
 気配を感じなかった。振り返るとそこには確かに一人の男が立っていた。手を伸ばせば届く。そんな近くに。底知れぬ恐怖を感じた。鳥肌が立つ。
「まずは君から――」
 徹は言葉の意味が分らなかった。男が口を開く。口の端から牙が見えた。人のものよりやや大きい。得も知れぬ恐怖を感じた。それは直感的なものだったが、徹は素直にそれに従った。次の瞬間、徹はアクセルをふかした。アッという間にスピードを上げると、その場を離れた。
 来るな、来るな!
 祈るような思いで、徹はバイクを加速させた。サイドミラーを見ると、黒い影が追いかけて来ていた。
「人間じゃない!?」
 徹はその尋常じゃない男の身体能力に驚愕し、彼が人間では無いことを知った。アクセルをふかし、バイクはさらに加速した。見る見るうちに二人の差は拡がっていく。だが、それほどしないうちに、奴はきっと追いつく。徹は直感的にそう思った。