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萌葱色に染まった心 2

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 月成徹はバイクで公道を走っていた。免許を取ってまだ二か月足らずだが、まるで自分の手足のように思うまま自由自在に操っている。といっても、行く当てが特にあるわけではない。気の向くまま今日は東へ、明日は北か南かはたまた西か。ともかく、高校を卒業したばかりの彼にはやりたいことがあったわけではなく、両親もすでにこの世にいなかったからである。旅に出ると聞いた叔父夫婦は何も言わなかった。止められないことは分かっていたからだ。
 出発前に電話で話した祖父も同様である。
 だから、自分の知らない世界を見たいと、高校三年間の間にバイトして貯めたお金でバイクを買い、旅に出たのだ。父のことは何も知らない。母を亡くしたのもうんと小さい頃のこと。以来、叔父夫婦に育てられてここまで大きくなった。出発前に初めてその話を聞かされたのだが、いまいちピンとこなかった。
 だから、徹は自分を不幸だと思ったことは一度もなかった。母が居なくても叔母が居てくれたし、不自由な思いをしたことがなかったからだ。だけれども、どちらかというと一人の方が落ち着くというのは、彼の生まれながらの性分なのかもしれないし、育った環境も大きく影響しているのだろうか。ともかく、彼には今の生活が一番性に合っていた。
 太陽も真上にさしかかり、昼時になろうとしていた。小腹がすいてきた徹はうどん屋が見えるなり、昼食を取ることに決めた。バイクを止め、貴重品を持って店内に入る。肉うどんを注文して、カウンター席の一番端にひっそりと腰掛けた。店内には他に客が一人いた。美女だ。二十三,四歳くらいだろうか。今が一番華といってもいいだろう。飾り気はないのだが、十分に可愛い。均整がとれており、わりと小さめの顔には、徹も思わず見とれてしまうほどだった。
 ベージュのセーターとスカイブルーのジーンズという格好だ。隣の椅子にはカバンとカーキ色のパーカーが置いてある。まだ肌寒いからだろうか。わりと厚めで暖かそうだ。額につけたベージュのバンダナが細い線の顔によく似合っている。その女は黙々とうどんを食べていた。よほど腹が減っているのだろうか。アッという間にどんぶり一つ平らげると、すぐに追加注文をした。呆れるくらいの食欲だ。徹のまえに注文した肉うどんが届き、彼が食べ終える頃には女は三杯目を食べ終えたところだった。
「ごちそうさま。お会計を」