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萌葱色に染まった心 2

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 言うが早いか、鬼が跳躍した。徹は着地地点を予想しながら、横薙ぎの一閃。彼は軽く身をひねってそれをかわす。続けざまに放った蹴りが、彼の脇腹を掠めた。
 カウンター気味に男の拳が徹のみぞおちを狙う。が、徹は後ろに飛んで、それをどうにかやり過ごした。徹は棒を構える。二人はにらみ合いながら対峙した。
「志穂、下がっていろ」
 徹は彼女を庇いながら、そうつぶやくと、男の向かって突きを繰り出す。一直線に迫るそれを、男は冷静に半歩横に動いて難なく買わし、標的を失った棒きれをいとも簡単に砕いて見せた。
 武器を失った徹は、空手の構えをとりながら、再び男と距離を置く。
 どうする?
 次の手を考えながら、徹は自問した。反応速度はもちろんのこと、戦い慣れしているのは、明らかに鬼と呼ばれた男の方だ。徹は圧倒的不利であることに違いはない。
 逃げるか?
 いや、そうすれば志穂がさらわれるのは目に見えている。やはり、自分が盾になって逃がした方が得策だろう。
 ああ、俺にもっと力があれば――。徹はそう思い、また願った。大きな力が欲しいと。守りたい者を守れる力が。すると、首から提げたペンダントから、青白い光が発せられた。
「なっ」
 鬼も驚愕の声を上げ、志穂にいたっては驚きで声も出せないようだ。
 だが、一番驚いたのは徹自身だ。彼は服の中からペンダントをとりだし、掌に乗せた。光っていたのは、ペンダントの先に突いている青い宝石だった。見る見るうちに光は強くなっていく。やがて光が収まっていくにつれ、ペンダントは大きく姿を変えていた。武器の姿へと――。
 徹は柄に当たる部分をギュッと握る。鏡のように洗礼された刀身を持った剣へと、ペンダントは姿を変えたのだ。
「ニーベルンゲンの忘れ形見か」
 鬼はつぶやいた。
「まさか、そんなものを持っているとは予想外だな」
 先ほどまでの余裕ある構えとは違い、鬼の構えが深くなった。
「ちっ!」
 鬼が舌打ちする。
 まぶしそうに光から目を庇っていた。朝日が地平線から顔をのぞかせ、海に光を反射させていた。空もだんだんと夜の深い藍色から目も覚めるような青空へと変わり始めていた。
「時間切れか……」
 彼はそうつぶやくと、徹と距離を取った。
「今度会うときは必ずその女をいただく。覚えてろ」