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萌葱色に染まった心 2

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 志穂はうなされていた。悪夢だった。目の前で、仲間が一人、二人と殺されていく。辺り一面は血の海だ。逃げ出した志穂には、殺された仲間の声が聞こえてきた。助けてくれ、まだ死にたくない。といったものだ。
 それを振り切るように闇の中を駆けていく、やがて彼女はトンネルを抜けて日の当たる表に出た。それが、目覚めだった。志穂が目覚めると、室内には徹の姿がなかった。まさか、もう出発したの? また、独りに? 志穂は不安になりながらシュラフから抜け出すと外に出た。朝日がまぶしい。でも、いい天気だ。そして、すぐ目の前で海を眺めながら体を伸ばす徹の姿があった。
「おはよう。ありがとう、昨日は」
「ぐっすり眠れたか?」
 目の下に隈を作っていたし、汗を掻いて寝苦しかったから、お世辞にもよく眠れたとは言えない。だが、志穂は徹に心配かけたくなかった。
「うん。おかげさまで」
 と、作り笑いを浮かべて言った。徹はじっと志穂の顔色をうかがっていたが、特に言及するわけではなく、表情を変えずに言った。
「それはよかった。さあ、朝飯にしよう。大したものは無いけど、腹の足しにはなるだろう」
 そういって、徹はバッグからパンを取り出して志穂によこした。
「目的地はどこだ? 近くまで送っていくぞ」
「うん……でも……」
「なんだよ、はっきり言えよ」
「うん……」
 志穂は口ごもった。言うべきか、それとも適当な近場で下ろしてもらうか。どっちでもいい。でも、せっかくだったら、護衛代わりに送ってってもらいたいな。志穂はそう思うと、意を決して目的地を告げた。
「東京」
「そっか。わかった」
 徹は短くそういうと、出発の準備に取り掛かった。荷物をまとめ、出発しようというところで、誰かが近づいてくる気配を感じた。
「探しましたよ、永岡さん」
 初めて見る顔だが、声からしておそらく昨日の男であることは間違いなかった。
「あなたは……鬼!?」
「鬼? なんだそりゃ」
 驚き、たじろぐ志穂と鬼と呼ばれた男の間に徹が分け入った。とっさに拾ってきた棒を武器に、男を威嚇しながら様子を伺う。
「なんだかしらないが、お引き取り願おうか」
「そのお嬢さんをこちらに渡してもらえれば、すぐに引き上げますよ」
 徹は近くにあった棒きれを拾いながら、
「嫌だといったら?」
 と、不敵な笑みを浮かべた。
「力づくでも」