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萌葱色に染まった心 2

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 そういってきびすを返し、姿をくらました。徹はフェイントを警戒して、戻ってくるかとしばらく構えを崩さなかったが、そういう気配がないことを悟ると、ようやく肩の力を抜いた。
「ありがとう、徹」
「いや、俺は別に。それよりも、あいつは何者なんだ? それに、俺のペンダントは……」
 いつの間にやら、ペンダントは元の姿に戻っている。親指大の青い宝石をじっと見つめ、徹は今起こったことを思い返していた。
「そのペンダント……」
 志穂はハッとしたようにバッグからハンカチを大事そうに取り出した。ハンカチは不自然にふくれあがっている。
「これとそっくり……」
 志穂が広げたハンカチの真ん中に、親指大の緑の宝石がついたペンダントがあった。奇しくも、それは徹の持っているものとそっくりである。違う点はただ一つ、宝石の色である。
「俺と同じペンダント……」
「本当に。まさか、これと同じものがあるなんて」
「なんなんだ? お前、何か知っているのか? このペンダントのこと、それからあの鬼とかいう男のこと」
 徹の問いに、しかし志穂は首を左右に振って否定した。
「くわしくは知らないわ。ペンダントが武器に変わるなんて事も。ただ、鬼のことなら多少は……」
「お前、そいつらに狙われているのか?」
「……そうなのかもしれない。ねえ、あたしを助けてよ。東京まででいいから、一緒に行ってくれない?」
「東京か」
 徹は小さなため息をつくと黙って頷いた。
 はっきりいって、あまり気の乗らない話であることに違いはない。なんといっても、徹は東京からでてきたばかりなのだ。
 つい、二週間ほど前に。こんなに早く東京の地を再び踏むことになるとは思っても見ないことだった。 はっきりいって大きな抵抗を感じている。だが、このまま放って置くようなことはしたくない。昨日は助けたのに、今日になって知りませんなど、誰がいえたものか。
「そうだな、フェリーで東京に向かおう。バイクの二人乗りで陸路を行くよりも安全だし体を休めることができる」
 そう提案したのは徹だった。
「でも、あたしお金が……」
 せっかくのいいアイデアも、その一言で水の泡になる。だが、徹はそれくらいではめげない。「オレが払うから大丈夫だ」と付け加えると、志穂も徹の考えに従うと言ったのだ。
「それに、鬼って奴のことを聞く時間もできるだろう?」
「ほんと、そうね」