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堕天の勇者!? 〜魔王はじめました〜

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二章 魔王はじめました


ここはとあるカフェテリア。各席に高位の防音魔法が掛けられており大事な商談や闇取引など他人に聞かれたくないことを話すための所。
「レーヤがいなくなっただと!」
その一角で一人の巨漢が叫んだ。
「うるさい!ガンドロフ!」
「なんだよエリー、だれにも聞こえねーって」
「私たちには聴こえてるの!だからうるさくしないで!耳が痛いから!」
今この席にいるのは4人。エリー、カリン、ガンドロフ、メアだ。その4人が話している内容は…
「で、いついなくなったんだ?」
「はい、気付いたのは今日の朝ですけど、おそらく私が寝た後の夜中だと思います」
ガンドロフの質問にメアが絶望の目をして答える声に生気はない。その様子にさすがのガンドロフも心配そうだ。
「手掛かりは無いの?」
小さい声でカリンがそう言った。
「それがね、レーヤの私物はすべてなくなってたのよね」
「あ、そういえば昨日レーヤがわたしに『メアをよろしくな』って言ったわ!これって自分がいなくなった後メアのことを頼むってことだったのね!」
エリーがどや顔でそういうとガンドロフは呆れた顔で「こいつバカだな…」とつぶやいた。
雑音のないこの空間ではそんな小さな言葉さえ澄んで聞こえる。当然エリーにも聞こえたが反論は出来なかった。その時点で自分が気づいて入れば…という気持ちがあったからだ。
しばしの沈黙。それを破ったのがメアの言葉だった。
「…そういえば私の枕もとにこんなのが置いてありました」
そうそれはレーヤがいつも身に着けていたブレスレットであった。
「これは…命のブレスレット」
「命のブレスレット?」
カリンの言葉にメアが問う。
「そう、命の硝石という特殊な石で造られたブレスレット。これを身に着けていれば命の危険にさらされたときに持ち主の命の代わりに砕け散る魔法道具」
相変わらずの小さな声でカリンは説明した。しかしそのあとの説明にメアは…いや、ガンドロフもエリーも希望を持った。
「この命のブレスットにはもう一つ特殊な能力があって持ち主の心…つまり魂と繋がってるの…だからこれがあれば空間魔法を使って持ち主の居場所が特定できる」
「じゃ、じゃあ!」
メアが何かを言いかけるがこれをカリンの言葉が邪魔をした。
「ただ問題なのが持ち主を離れて時間がたっているから今の持ち主が妹だということ」
再び沈黙。しかしガンドロフが珍しく頭を使った発言をし再びみんなに希望を持たせる。
「それってよ―そのブレスレットに時間魔法をかけてまだレーヤが持ち主だった時の時間に戻せばいいんじゃね?」
……………………
「「「それだ」」」

「はぁ…また来ちゃったよ…魔王城に…」
故郷と家とメア、そして勇者という名に別れを告げた俺は今魔王城の前にいた転移魔法を使って来ても良かったが今の魔族の様子を見ておきたかったため歩いて来ていた。
結果からみればとそう道理魔族は荒れていた。
「てか俺はどうすればいいんだ…?」
俺はどうやって魔王になればいいのか全く考えていなかった。だいたい俺は人間だし…
そんなことを考えていると魔王城の扉が開いた
「!?」
俺は思わず剣を構えた。中から出てきたのはサキュバス族の女だった。見たところメイドのような格好をしている。
「お待ちしておりましたレーヤ様」
「へ?」
サキュバスの女の予想外の言葉にすっとボケた声を出してしまう。だってそうだろ?あの話は俺と魔王だけにしか聞こえてないはずだったから。
「私の名前はリリス・メイサ、この魔王城でメイドをやっております。メイサとお呼び下さい」
「ちょ、ちょっとその前に待ってたってどういうこと?」
うむ。我ながら妥当な質問だと思う。
「はいそれでしたら魔王様の死後、魔王様の魂と交信した際に『勇者レーヤが再びこの魔王城へ来るはずだ。その時は新たな魔王として迎え入れてくれ』といわれたので」
死者との会話…最高位の闇魔法だ…それを使えるなんてこいつもタダものじゃないな…
「そういうことか、じゃあよろしくなメイサ」
「はいよろしくおねがいします。魔王様」
そう言われて顔が引きつってしまったのは言うまでもない。

「で、おれは何をすればいいんだ?」
はっきり言って魔王が何をすればいいかわからない。なんせ人の上に立ったことがないからな。
「まず貴方様には魔族の頂点に立つ者として魔族になってもらいます。」
「…マジすか?」
「マジです」
軽く予想はしていたが言われるとかなり来るものである。そんなことよりどうやって魔族になるんだ?てかなんの種族に何の俺!?ゴブリン族とやだよ俺!
「ふふふ…ゴブリン族にはなりませんよ」
…どうやら心も読めるようだメイサは
「あなたの素質にもよりますが高位魔族のどれかになりますよ」
そうか良かった…って安心してる俺もあれだが。なれるなら闇騎士族とかいいな。あいつら強いしかっこいいしな。
そうこうしてるうちに巨大な魔法陣のある部屋にたどり着いた。
「その魔法陣の真ん中に立って下さい」
メイサに言われるままに魔法陣の真ん中に立った
「それでは始めます」
メイサはそういうと目を閉じ両手を前に出し詠唱を始めた。すると魔法陣が黒く輝きだし始めた。
 一時間くらいたち、メイサの詠唱が終わる。すると俺の体が黒く輝き始める。
輝きも収まり自分の体を確認してみるがどこにも変化は見られない。ただ少し肩甲骨あたりに違和感があった。失敗したのかと思い、メイサを見る。しかしメイサは目を見開き驚愕を浮かべている。周りを見回すと大きな鏡があった。いやな予感がして小走りで鏡の前に立つ。
「これは…」
見たこともない魔族の姿であった。
まず背中に羽がある。それも天使の羽を黒く染めたようなもの。そして牙。目はもともと切れ長だがそれ以上に鋭い。目の色も元々碧だが真っ赤に染まっている。もっとも特徴的なのは黒に近い紫色の天使の輪のようなもの。
吸血鬼族かとも思ったが、羽は蝙蝠じゃないし第一頭に輪なんてついていない。
「まさか…」
ここでメイサが口を開いた。
「神魔族…!」
「神魔族ってまさか!」
そう神魔族と言えば伝説の!
「察しの通り…歴代最強魔王の初代魔王ルシファー様と一緒の種族です」

「カリン準備できた?」
「うんできた」
あのあと場所を移動してレーヤの家に移動していた。理由としてはレーヤの気が一番たまっているからだ。
リビングにはいつものテーブルがなく結界を張るための魔法陣とそして時間魔法の為の魔法陣が描かれていた。
「じゃあはじめようぜ!」
ガンドロフが言い他の3人も頷く。
魔法陣の真ん中に命のブレスレットを置く。
「はじめます」
カリンが時間魔法を詠唱し始める。時間魔法は様々あるがその中でも過去を司る時間魔法は使う魔力も規格外だが詠唱時間がとてもかかる。一言でも間違えてしまえば最初からやり直しだ。しかしカリンに対して誰もそんな心配はしてない。それほどの信頼が彼女にあるのだ。
部屋にはカリンの詠唱だけが響く。そんな時間が2時間と20分続いた。
「…おわった」
カリンの一声でみなの緊張がとける。しかしこれで終わったわけではない。これから空間魔法も始めなければならない。