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No.27

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 善明はここで噛んだとか、疲労で倒れたとかそういう内因で言い切ることができなかったわけではない。近いうち後者は実現する可能性があるが少なくとも今はそういった理由ではない。続きのきを言おうとしたタイミングで、屋上の扉が思い切り開かれたためである。その外因性のショックで、善明はきと発音しようとした微妙な表情筋の状態の儘フリーズしてしまった。扉は開かれた衝撃が強すぎたためか百八十度開閉していた。壁に思い切りぶつかり耳障りな金属の衝突音が屋上に、空に響いた。もしかしたら学校中に響き渡ったかもしれない。そう真理だって善明だって思ったであろう大きな音だった。
 俺は鼓膜がまだかすかに振動しているのを感じながら、錆びついたブリキのようにゆっくり音源の方を向いた。予想通りとも言い難いが、予想外とも言い辛い。真理が隣で「うえ」と小さく洩らすのが聞こえた。
「ああ、よしくんこんなところにいたの!」
「こんなところとは相変わらず失礼な女だな。何度言えば君は大人しく扉を――」
 比較的女性に対してはまだ優しい真理だが、登場した彼女にだけはどうしてか厳しい。彼曰く生理的に合わない女なのらしいが、俺としてはただの同族嫌悪だと思う。二人とも特定の人物に対して以外性格が極悪だ。主に
善明に対して二人は善人だ。俺については察していただきたい。
 女――美映という。甘すぎるチョコレートのような色の髪は地毛らしい。よくクラスの女子に羨ましがられているのを見る。ボブの髪は何時でもふわふわとセットされている。色素が薄いのだろう、肌も白く少し雀斑も見受けられる。髪と同じ色の瞳は、平均から見ても大きい方だろう。ごく一般的な視点から見て、可愛いと呼ばれる部類の人間だ。
 中身を知らなければ、という前提をここにはカッコ書きしておかなければならないが。
「お黙り屋上ひきこもり根暗男。私のよしくんをこんな湿っぽいところに拘束しないで頂戴」
 美映は善明を盲目的に好いている。善明は残念ながらそういった気は更々ないのだが、まったく気にすることなく彼女候補と豪語している。今はまだ彼女候補だが、そろそろ勝手に彼女だと叫びだしそうで怖い。思い込みが激しいのも彼女の欠点の一つだろう。
 善明は屋上の入口に仁王立ちになり、真理を睨み下ろしている美映にうんざりした視線をやった。
作品名:No.27 作家名:戀絲つばき