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No.27

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「それは下から数えて八位、という理解で構わないのかな」
 ちちち、と俺の腕時計の針の音。それくらいは、しんとした。
「大正解。さすがしんゆ」
「三百二十一位の親友は要らないよ」
「ひ、ひでえ!」
ばっさりと切り捨てた後、傍らに積まれていた本の上から二冊目を引き抜いた。陽の光を淡く反射するブックカバーはまだ新しいようで、販促のミニコミが挟まっているのがわかる。
「せめて五教科ぐらいがんばったら?」
ひょい、とその本は放り投げられて俺の懐に着地した。オレンジが眩しい、それは参考書のようだった。表紙には数学?とゴシック体で大きく書かれている。
「オメカ出版……」
「よくみなよ、オメカじゃないオメガだ」
じっと目を凝らす。光っていて判別しにくかったが確かにCではなくGだ。
「そのオメガの参考書をどうしろと?」
「いやいやいやいや勉強に使うしかないんじゃない?」
「あ、そうか」
真理の顔がみるみる苛立ちに青ざめていくのがわかった。人は怒ると赤くなり、苛立つと青くなるらしい。
 そんなくだらないことを考えながら、俺は手に持っていた参考書をぱらりと捲ってみる。要点がまとめてあり、xやらyやらが羅列されている。
「なあ真理」
 さっきの分厚い本に視線を戻した真理は、俺の問いかけにいまだに青い顔を上げた。本は一種の精神安定剤みたいだから、早々に読書に戻りたいに違いない。俺には関係ないけれど。
「なにかな季彦くん」
「これはいったい何を表した呪文なの?」
「おま……」
 真理は絶句して青い顔を通り越して白くなっていた。俺の指差した先に並んだ呪文。
 それからあっけにとられる真理の顔。
 まさか自分の知識がここまで遅れていたなんて、俺はこのときまで知る由はなかったのだ。





「Xについてこの式を解いて……」
 青いベンチの右側に俺。左側に真理。逆様になった、使われなくなってだいぶ経つゴミ箱に善明。俺はベンチの上に体育すわりをして、先日衝撃的な現実を知ったきっかけでもある参考書を広げていた。一応傍らにはペンケース、とノート。一応、とつけたのはこの数日使ったためしがないからである。
「季彦くんさ、今更因数分解って馬鹿にしてるの?」
作品名:No.27 作家名:戀絲つばき