小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

No.27

INDEX|40ページ/44ページ|

次のページ前のページ
 

 美映も善明も、真理も全員違うクラスでテストももちろんバラバラにうけている。真理は今まで通り隣の棟の何処かの教室で受けているのだろう。
「頑張って」
そういって一発殴ってくれた美映のため――なんかすごく理不尽な気もするが――にも、几帳面な字で書かれた手作りの単語帳をくれた善明のためにも、参考書を五冊も提供してくれた真理のためにもなんとか俺は進級をしなくてはならないのだ。
「それではテスト開始」
 チャイムと重ねてかけられた監督教師の合図に、俺は小さく息を吐き出した。



「よっしゃあああああっ」
 この日、放課後校内に残っていた生徒たちはもれなく俺の叫び声を聞いただろう。今日はテスト休み前日の最後の授業の日。担任に呼び出されたのは生徒指導室だった。俺は順位も出てないのになにを宣告されるのだろうと、背中にひやりとしたものを感じながら部屋を訪ねた。
 そこで告げられたのは、進級可の三文字だった。
「なんでっ、なんでっすか」
興奮気味に担任に詰め寄ると、本当はもともと進級させるつもりだった、ということらしい。しかし、ある程度の成績を持っていてもらえないと担任として進級可とは学校に言えない、だから無理やりテストの成績を上げる為にしかたなく――という。ということはやっぱり今回のテストがあまりに悪かったら留年だったということか。
取り急ぎ俺とほか数人の危ない生徒のテストの結果を出したところ、俺成績急上昇、みたいな? やればできるんだなお前、というコメント付きで生徒指導室を追い出さた。外で待っていたちょっと前までの俺である同級生に笑いかけ、浮足立つ自分を必死に押さえ廊下を歩く。しかし自分の教室の前に差し掛かったところでいろいろ耐えきれず、冒頭に戻るわけである。
「真理に言わなきゃな、あと善明と美映にも……」
 まだ校内に残っているだろうか。明日から休みだし、もしかしたらまだ屋上でたまっているかもしれない。そう思い、スキップしたい気持ちを抑え、俺は屋上に向かった。
 午後三時。茜色と橙色の間の空の色。屋上の錆びれた扉をあけると、見慣れた三人の顔があった。
 逆さまになったゴミ箱に座る善明、その隣に立っている美映。二つあるベンチの左側に、投げやりに座った真理。思った通り、残っていたらしい。
「あ、すえひこ」
「おー、呼び出しくらったんだって?」
作品名:No.27 作家名:戀絲つばき