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No.27

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腕を掴む代わりに押さえた本の山。少しの沈黙の後、真理はもう一度腰を落ち着けた。ひとまず成功といったところだろうか。俺がもう一度数人の残った生徒を振り返って見渡すと、慌てて自分たちの持っている本や参考書に視線を落とした。これだから真面目そうな顔した奴らは嫌いなんだ。普段抑圧されてる分、俺や真理のような外れ者にはひどく冷たい。
「あと、ここ教えてほしいんだよね」
 さっきからまったく意味のわからない英語の長文を指差して尋ねると、真理は呆けた顔で長文を確認する。それから、ものすごく憐れんでいる眼で見られた。
 やっぱり人間勉強より、やっぱり心が大切だよな。――どうせ馬鹿だよ。
 俺が駄目人間というのはさておいて、そうこうしているうちに俺は今、定期テストの本番を迎えている。全員がぴりぴりしている、かといえばそうでもなく、俺だけがいっぱいいっぱいだった。
真理はあれからときどき図書室に顔を出すようになり、俺の他の友人達――まあ中学時代のダチなんだが――とも少し会話をする程度になった。今迄からしたらすごい進歩であろう。クラス替えのない学校なのだが、ちょうどそいつらは真理と同じクラスらしく、頻りにクラスに来るように迫っていた。ドン引きされているのに気付かないのがあいつららしい。良い奴らではあるので、これなら教室に戻るのも少し安心ではないだろうか。なんだか釈然とはしなかったが、良いことに変わりはない。
「類は友を呼ぶ……」
「何が言いたい」
「何にも」
 ぶつくさ言ってはいたが、満更でもないらしい。しかし、たまたま図書室に来た善明はものすごく驚いていた。それが普通の反応だろうな。たぶん俺も善明なら驚いている。
 なんていう少し前のことを詳細に回想してしまうくらいには差し迫った精神状況にある今。すでに最後の公民のテストなのだが、今までのテストの出来が良かったか否かと聞かれればまったく覚えてないというのが答えだろう。担任がテスト前に、
 ――意地でも百五十番以上をとれ、この際ぎりぎりでもいい、百六十番なら留年だと思え。
といういらないプレッシャーをかけてきたせいもあり、俺はすっかりプチパニックである。なぜかって言えば、元最後の良心が恐ろしいからである。
作品名:No.27 作家名:戀絲つばき