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No.27

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 放課後の図書室になぜか徐々に人が増えてるのだが、真理効果というやつだろうか。そこのお嬢さん、ソフトボール部のユニフォームは図書室には不釣り合いですよ。
「君が図書室で必死に勉強してるって善明と美映が言うから、ついでにね。馬鹿にし……冷やかしにね」
「最後ほとんど意味同じだろ」
 言っていることは失礼極まりない上から目線なのだが、声がいつもの十分の一も出てるかわからないくらい小さい。視線が落ち着かずに、俺と本と衆人を順に辿っているようだった。
「本、返さなくていいのか」
「ああ、いや」
 ちらりとカウンターを見る。俺も背を向けた形になっているカウンターの方を振り返る。うん、あれでは確かに返しに行けないな。
 物好きの図書委員達は、こちらを隠れることもなく好奇の目を向けている。友人と思われる女子が一緒に、小声出けれど騒いでいた。大体の生徒は事実を確認すると帰ってしまうので、今度は徐々に人が減っているのだが、もともと図書室に居座っていた人間は変わらず自分の指定席に座りこちらを盗み見ている。こういうのはあまり、羨ましいものではない。
 真理は溜息すら洩らさず、衆人環境に耐えている。こういうところで意地っ張りというか、すべて自分に押し込めるのが好きなのだろう。
「返却期限、今日だけどやっぱり明日にしようかな」
 どうにも耐えきれなくなってきたのか、腰を浮かせる。
 ここで帰したら、もう真理は二度と屋上以外にこないだろう。それは直感的にわかった。無理をさせたいわけじゃない。それでも親友として、それではいけない気がした。
「真理」
 トーンを落とすこともせず、図書室用のウィスパーボイスでもなく、俺は真理をはっきりと呼んだ。真理は腰を少しだけ浮かせた恰好で固まる。気のせいかもしれないが、気分の悪い囁き合いも止んだようだった。
「居ろよ」
 半ば命令口調になってしまった。何も考えずに発言するべきではない。最近そういう失敗が多いので今後の改善点にしなくてならない。しかしここで俺が萎れてしまっては意味がない。逆効果になりかねない。
「お前が帰らなきゃいけない理由はないだろ?」
「きみ、うるさ」
「そうだなあ、一人で勉強するのは少し飽きてんだよね。帰られたら少し困るかなー」
作品名:No.27 作家名:戀絲つばき