No.27
という理由でその結論に行き当たったという。まあ言われてみれば、そうかもしれない。美映のラヴアタック――なんか痛々しい命名だが――は逆効果にもほどがあったということか。
「季彦くんなら気付くかなって思ったけど、なんていうかまんま鵜呑みされたからあえて言わなかったんだよ……」
「うっわくだらねえー。おい善明、お前俺の後悔と美映の涙を返せ。今すぐ熨斗付けて返せ。なんだようわーくだらねえくだらねえ」
「そんなくだらないイベントのせいで僕は長々とこのサボり魔に心中を晒してしまったのか……」
「え? なに? なんで二人ともげっそりしてるの?」
俺と真理はベンチに溶けるようにうなだれて、よくわからない気恥かしさに苛まれていた。だってそうじゃないか。俺も真理も、ついでに美映もはたから見たら結構こそばゆい日々を送っていたのだ。その根源が、こんなにもくだらない――ああくだらなくはないのかもしれないが、兎に角素敵な勘違いだなんて。大真面目に精神世界を語った俺達の過去を今すぐ消してきてくれないか。
「善明、お前はずっと屋上最後の良心だった。なあ真理」
「ああそうだね。そこは満場一致だろうな」
「え、いやあ照れるなあ。あ、でも、だった?」
真理は残念そうに首を横にゆるりと振った。俺はなんだかもう泣きそうだったが、長い溜息で誤魔化した。
「でももうお前は、俺たちにとってただの彼女できたての浮かれた野郎でしかないのだよ善明くん」
「うん、珍しく意見があったね季彦君」
「ちょ、なんでそうなるのさ!」
大方がやつあたりである。真理だってそうだろう。
「問答無用だ。最後の……最後のりょ、最後の良心なら良心らしく、お前、もう、嫌い!」
自分でも何が言いたいのかわからかった。やり直したいことばかりだ。誰か早くネコ型ロボット発明してくれよ。
「美映もなんだかんだでこんな面倒臭い奴でいいのかよ」
「はっ、お黙り青春野郎。すえひこは精々そこの偏屈と仲良くしておいで!」
この女……と言いかけて頑張って口をつぐんだ。流石に彼女が大好きでしかたない男の前で愚弄できるほど度胸は無い。
「……で、でも感謝してるんだからね。ミルクいちごパン、ぐしゃぐしゃになっちゃったけど、ちゃんと食べなさいよ。最後の一個、後輩からもぎ取ってきたんだから……」