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No.27

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「お前もよしくんも、何時俺を遠ざけるかわからないじゃないか。俺を見透かすような眼をしたあの女も――美映も、全部、怖いだけなんだよ」
 はあ、と大きく深呼吸する。俺も釣られるように深く息を吸った。一瞬の沈黙。俺は口を開いた。
「お前に何があったかは、知らないよ。ひとりになる怖さなんて知りもしない。家に帰れば家族がいて、学校に来ればたくさんの知った顔が笑ってくれる。それって人気者とかそういう特別なもんじゃないじゃん。普通に生きてれば手に入れることって、難しいことじゃない。だからほんの少しの、ひとりなんて怖くない。俺はいままでそう思ってた」
 なんだか持て余した足が落ち着かなくて、俺はベンチの上で胡坐をかいた。もうお互いを視界に収めることはしていなくて、俺は古い日にやけたコンクリの床と空をみているだけだった。
「でも俺にとってのひとりは、お前とはきっと違うんだろうな。この一年でなんとなくわかった気もするよ」
 かりかりとベンチをひっかく音が聞こえる。そっと窺うと、真理はじっと神妙な顔で俯いて、拙い俺の話に耳を傾けていてくれた。
「頼むから、俺たち――いやこの際善明でもいい。頼むから信用してくれよ。なんかおかしいお願いだけどさ。一年半だぜ、十八か月お前の罵倒を俺は耐え抜いたんだぜ。すげーだろ」
 ははっ、と笑って胡坐をかいた足をもう投げ出してしまった。落ち着かない、なんていうか、そう。こそばゆい。さらっとかっこよく素敵な言葉を俺にかけてくれた善明は本当に偉大だな。女の子泣かせたけどな。
「自慢になんないよ阿呆」
「阿呆で結構。これはもう武勇伝だ」
ぼそりと反論した言葉に俺は安心した。これでしわしわに萎れてしまったら困る。しおらしい真理なんて楽しくない。
「僕は」
 ゆっくり、だったけれど弱弱しくはなかった。意志のこもった言葉が、ちょっとずつ屋上に落ちていく。
「君を馬鹿だとか阿呆だとか言ってばっかりだし本当にそう思ってるけど」
 あ、そこはずっと正直だったわけですね。
「親友だとか喚いたり、ばればれのフォローをしようとしたりされることは、別に嫌だとか思ったことはなかった、から。それも怖かったよ。よしくんが僕に対してとる態度は、すごく心地よくてもっとここから離れることが怖くなった。初めて見たとき美映が僕に向けた視線は、確実に自分に似たものを見つけたものだった」
作品名:No.27 作家名:戀絲つばき