小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

No.27

INDEX|24ページ/44ページ|

次のページ前のページ
 

 善明はありがとうと律儀に礼を述べると、午後の授業のために席をたった。俺は授業にでる気分ではなかったので手を振って見送った。ちゃんと出席しないとだめだよ、という別れの台詞は今より少しだけ柔らかいニュアンスで、あらためて思い出すと面白いものだ。すっかりとげとげしくなっちゃって、俺には。
 それから間もなく昼休み、善明と顔を合わせたのはまさかの屋上であった。この時ばかりは善明が本当は優等生ではなく人の良さそうな顔した悪戯小僧にみえた。おいおい昨日の今日で本人に会いに来ちゃうのかよ、みたいな驚愕。というより俺が真理に怒られそうで怖かっただけなのだが、どうも真理は怒ってはいないようだった。むしろなんか楽しそうだった。あれ、俺の立場とか無い感じかな、という複雑な笑顔を俺は浮かべていたに違いない。
「あは、季彦くんお邪魔してます」
「いえいえなんのお構いもできませんで……って! え!」
「ちょっと季彦君うるさいよ君」
わざとらしく耳を塞いでこっちをみる真理。善明はベンチではなく、逆さまになったゴミ箱に座っていた。今後彼はそこが定位置となる。なぜベンチを選ばなかったのかは聞いたこともない。
「なんかね、ずっと気になってはいたんだけど噂とか怖いじゃない。季彦くんの話を聞く限り悪い人じゃないみたいだから」
「僕はこんなに善良で優等生ですみたいな顔した実はただの好奇心と探求心の塊なんですみたいな愉快な人間とは会ったことがなかったよ。季彦君、今回ばっかりはお手柄だよ」
「これはおれ誉められてるのかな季彦くん」
「たぶん結構なレベルで誉めてるよ。あと俺はすっかり馬鹿にされてる」
 苦笑いの生徒が二人と、嬉々とした男子が一人。真理はそういったところでずれているのだ。隣の開いてるベンチへとどかりと腰を下ろす。
「だって君、聞いてくれよ」
珍しく積極的な真理に俺もだんだんと引っ張られて、少し楽しい気分になってきたがいまいち釈然とはしなかった。今でもそうだが、俺が馬鹿にされる大きな理由ってやっぱりサボり魔であるってところなのか。今度聞いてみよう。
「なんだよ」
「善明君の第一声なんだとおもう?」
「さあ」
本に触れてさえいない。俺は肩をすくめるだけで応えた。
「屋上って楽しいの? だって。いやあ、驚いたよ」
「で、この偏屈はなんて応えたの?」
「特に、だって」
「う、ううん……」
作品名:No.27 作家名:戀絲つばき