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No.27

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その間違われなかったことのない俺の名前を呼ぶのは、三組の評議委員であり彼もまた一年生の時からの付き合いがあるヨシアキ君その人である。善に明るいという善いことをするために産まれてきたような名前の彼は、実際素晴らしい人間だった。逆名にならなくてよかったということを全力で主張したい。
「なんだよ善明大先生」
「なんだよじゃないよね季彦くん」
 にこやかにほほ笑む爽やかな、なかなかの美少年。俺は同じようににっこりと笑顔を投げ返す。そんな二人の間にひゅるりと風が吹き抜けた。
 そう、吹きぬけたのである。
 元来室内で風が吹き抜けるのは強風で窓を開け放っていた時ぐらいで、多少の風ではカーテンが緩やかに戦ぐ程度だ。ひゅるりなんていう擬音語が当てはまるような風は吹かない。
 簡単なことである、ここは教室ではない。抜けるような青空が頭上に広がった、屋上という一種のフィールドである。
「マサミチくんもマサミチくんだよ。君はいいけど、このすっとこどっこいのちゃらんぽらんは進級すら危ういんだ」
「すっとこどっこいなんてまだ使う人居たんだな」
「季彦くんはこの際もう喋らなくていいよ」
 ひどいなあ、とつぶやく。にこやかな笑顔の裏に何かどす黒いものが見えた気がして、口をつぐんだ。こういう優しさの塊みたいな人が一番実は怖いんだ。鬱屈しているのだろうか、可哀想に。
「そんな目で俺をみないでくれないかな季彦くん」
 青筋の浮いたこめかみを押さえながらひとつ咳払い。可哀想なものを見る目をしていたらしい。
「だからマサミチくんたら」
 善明が振り向いた先、青色の古いベンチに仰向けに寝転がるもう一人の男子生徒。顔の上に乗せられたのは“色でひける花の名前がわかる本“という辛気臭い本だった。こいつは俺の親友というやつだ。一度も同意はもらったことはないが、多分最近はやりのナントカってやつだと信じて疑わない。名前はマサミチ、真の方の真理とかいてマサミチ。こいつはこいつで、マリだとかマコトだとかに間違われている。まだ日本人らしいあたり俺よりずっとましだ。そんな真理は本を、腹の上に乗せていた右手で取り払うと、俺たちをじろりと見渡した。就寝中であったらしい、目の焦点が合っていない。
「よしくんもさあ、先生からの頼みを断れない口だよね」
作品名:No.27 作家名:戀絲つばき