No.27
何を言い出すかと思えば、というところだろうか。面倒くさいとかうざったいぐらいは思っているかもしれないが、嫌い、なんて思ってはいないだろう。俺や真理なんかよりずっと長く善明と付き合いがあるくせにそんなこともわからないのだろうか。いや、逆にわからなくなることの方が多いのかもしれない。長く付き合っているから事見えなくなることがあるのかもしれない。
「私、よしくんには我儘ばっかり言ってきたし、べたべたするし……。女子なのに男子にきついことばっかり言うし、空気読まないし。そんな幼馴染は嫌かな、と思って」
「なに、何かあったの?」
唐突だ。美映にとってみれば長いこと悩んでいたことなのかもしれないが、俺からしたらまったく脈絡のない話だ。だって伏線すらなかったじゃないか。真理もなにか気付いた様子はなかったが――。
ああそうか、俺は一週間四人で会っていないのか。
その一週間に何かがあったというのだろうか。でも俺は一切誰とも会っていないわけではない。満たしてないのは四人そろって、ということだけだ。善明とは会っているし、その時なにか変った点は感じられなかった。ただの鈍感ではといわれてしまえば俺はなにも言い返せないが。
「んー。いや、ね。ずっと思ってたことなの。好きっていってもよしくんは笑ってありがとうっていってくれるだけ。長く一緒にいるとどうしてもお互いをよく知ってしまうでしょう? だから、よしくんにとって私は恋愛対象になりえないんじゃないかって」
「まあ、よくいうよな。どんなに可愛くても幼馴染は恋愛対象じゃないよなって」
俺が少し前に美映について感じたことだ。
「よく言われるわ。クラスの子にも言われたの。美映はどうしてそんなに善明君が好きなのって、長いんでしょ近所付き合いって」
ここで美映はやっとパンの袋に手を伸ばした。ぺり、というささやかなノリがはがれる音だけで封が開く。俺は聞く側に徹底しようと口を塞ぐかわりにパンをほおばった。美映が少しずつでも零す言葉を遮るわけにはいかない。なかなか女子の話を聞く機会もないしね。
「私にとってよしくんは本当に特別なの。一年生で同じクラスになって隣の席になったとき、よしくんが話しかけてくれたのが最初。それから今まで一緒にいる。私が付いて回ってるに近かったけど、よしくんは私を遠ざけたりしなかったし、一番に考えてくれた」