No.27
図書室の外はだいぶ暗くなっていた。蛍光灯の明かりがぼんやりと照らす廊下。窓からさすのは夕日ではなく街灯の明かりだった。冬の日はこうだからあまり好きじゃない。俺は明るい昼間の方がずっと落ち着く。
「ああ、どこにいこうか」
「屋上」
「開いてる?」
「真理に開けといてもらった」
いいのか。放課後必要以上に屋上が開いていることは、あまり教師達は好ましくないらしい。普通に考えてそうだろう。そもそも真理の行動自体あまり面白くないらしい。それでもなぜそれが許されているのかは今のところわかっていない。
まあ善意で開けてもらっていることにとやかくいうつもりは一切ないけれど。
その屋上だが、今日はすでに無人になっていた。一階の図書室から四階の一つ上までは骨が折れたが、ミルクいちごぱ――違う違う。美映のためならこれくらい大したことないさ。
「ああ、なんか久々だなー! 解放感が素晴らしいスポットだよなここ」
「そうねー。壁と天井って圧迫感あるんだなって思う」
いつも真理が座る方のベンチへ俺が座り、隣のベンチに美映が腰を下ろした。前触れもなく美映がパンの袋を投げてよこし、俺は危うく落としそうになったが無事受け取ることに成功した。おお何時ぶりかなでらっくす。
「そんで? 突然なんだよ」
「悔しいけど、季彦と真理しか相談する相手が見つからなかったの。真理に相談するのはしゃくだからあんたに相談しようと思って」
破裂音に似た効果音でパンの袋を開け、ピンク色のパンに齧り付く。
美映は落ち込んでるという感じではなかったが、どこか不安そうな雰囲気を漂わせていた。それも物珍しくて、視線を滑らせるだけでそっと観察した。美映も好きなはずのパンはビニール袋の中に入ったままで、両の手は持て余されていた。スカートから伸びた細い脚は投げ出されるようで、まるですさんでいる。美映の座り方は何時でも豪快なものがあるのは確かなのだが。
「最近思ったのだけど、よしくんて私のこと本当は嫌いなんじゃないかなって」
「はあ?」
「なにその顔……。馬鹿にしたような眼で私を見るのはやめて」