夜のゆびさき 神末家綺談2
「穂積の仕事を間近で見てみるといい。ちょうど夏休みだしな。嫌なら無理にとは言わンがね」
「俺、行きたい・・・!」
穂積の仕事を知ることが、ひいては瑞を知ることになるだろう。
「そうか。穂積に相談するといい」
「うん・・・!」
夜空を彩る花火を眺めながら、伊吹は新しい扉が開いていくのを感じていた。
ただ漠然と、跡を継ぐのだと思っていたが、目的が出来たような、方向が定まったような、
そんな感覚。
幼い希望に光だけを感じる伊吹は、まだ知るよしもない。
灼熱の痛みも。
混沌の重みも
永劫の孤独の深さも。
いずれ迎える花嫁の贖罪も。
己の血に流れる業の深さも。
.
作品名:夜のゆびさき 神末家綺談2 作家名:ひなた眞白