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ゾディアック 12~ 81、82 、83、84、85、86~

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「 まあ、生きてるといつも人間界の呪縛に囚われますよね 」カヨは言った。
「 そうだね。でも信じようが信じまいが、真実はそこに眠ってるのさ 」私は言った。

「 あ、この度 ダンナとお好み焼き屋のお店を出したんです!
マリオンさんも来てくださいね。太陽ていいます 」カヨは言った。
「 太陽・・ インカネーショナルスター・・ 魂の目的か 」私はニヤリとした。



~ 86 ~

人の瞳の奥に宿る光は、
どんなに転生を繰り返しても 変わらない

風が吹いて・・ 水を走らせる・・
子音は風、母音は水
ナディアが 身体を駆け巡る

輪廻という時を回し
ダルマに向かって起動し始める
ゾディアック
同じ宇宙に 同じ時間はない

永遠の今、風に吹かれながら
時は やって来る・・ 



引き戸を開けると、エプロン姿のカヨが 満面の笑顔で出迎えた。
「 いらっしゃいませ 」
カヨの後ろに隠れるように、小さな女の子が 覗いていた。
「 ルカちゃん、こんにちは 」一緒に来たカヨと仲の良かったナミが
女の子の前にしゃがみ込んで話しかけた。

「 どうぞ、座って下さい 」カヨは私達をカウンターに案内した。
ジュージュー湯気を上げながら、野菜の焼ける香ばしい匂いがしていた。
昼時で 店は込み合っていた。
若い夫婦が始めた店は どうやら評判のようだ。

「 シンプルで綺麗なお店だね 」私が言うと、湯気の向こうから声がした。
「 ありがとうございます。ゆっくりして行って下さい 」
ガッチリとした体格の良い輪郭が現れた。

修道女の面影は 微塵も感じない・・ 男性の姿だった。
当たり前だ・・ あれは何百年も前の姿なのだから。
私はまじまじと見入ってしまった。
彼は恥ずかしそうに目を伏せると、お好み焼きを焼いた。
少し神経質そうな面持ちは 修道女の前世と変わらない

食事を終え、店舗裏の新築の家へ行った。
中から赤ちゃんの泣き声がしていた。
「 え、赤ちゃん置いたままだったの? 」ナミが驚いて聞いた。
「 昼は店が忙しいから、寝かせてたの 」カヨは急いで玄関の鍵を開けた。

エントランスに入ると、白い壁と大きな柱の明るい部屋が広がっていた。
「 素敵なお家ね、まるで・・ 」ナミが言いかけると
「 そうなの、憧れの南ケランス地方の家にしょうって、ダンナが凝って建てたの 」
カヨが赤ちゃんを奥の部屋から抱いて来た。

「 南ケランスは、カヨとダンナが前世出逢った場所だ 」私は呟いた。
「 太陽・・ インカネーショナルスター、魂の目的を果たせたね 」

「 え?カヨとダンナさんて 南ケランスで逢ったの?太陽て、カヨの店の名前よね?? 」
ナミは意味が分からず聞いたが、カヨは笑って頷いた。
「 お茶入れるね 」そう言ってカヨは赤ちゃんを手渡し、私はダイニングに腰かけた。
ナミは ルカちゃんと一緒に遊んでいた。

風が、白いカーテンを大きく揺らし部屋を吹き抜けていった。
私の腕の中で 無邪気に笑う赤ん坊の瞳に、翠色に輝くヤツの瞳が映り込んでいた。

「 ただいま・・ 」暫くしてダンナが帰って来た。
「 お店は? 」ナミが聞くと、
「 次は夕方からなの 」カヨは言った。

彼は、ダイニングの私の前の席に腰かけ、子供と戯れていた。
そして軽い食事を取りながら、突然聞いて来た。
「 見えるんですか? 」

「 ・・ 外に見てる分けじゃないけど、ここに感じる 」
私は応えに迷いながら 眉間を指差した。
「 へー、今 俺に何か見えます? 」カヨのダンナは言った。

私は目を閉じると、眉間に クルクル回る光る菱型が浮き上がるのを感じた
光る菱型は更に高速回転し 眩しさが増して行くと
眉間の奥は透き通って 後頭部に突き抜けていくような不思議な感覚に襲われた。
静かな無音の美しい音が聞こえた。
実際に音は聞こえていないのに・・ 聞こえると強く感じ、光も見えると強く感じた。

「 修道女だった 」私は呟いた。
「 修道女?・・だからですかね、マレーナ像の絵とか、クルスとか好きなんですよね。
女みたいで、ちょっと抵抗があったんですけど・・ 」

「 信じる心を試された。あの時からのカルマだ 」私は言った。
「 信じる・・ 何を? 」彼は怪訝そうに言った。
「 アイを信じる。その為に生まれて来た 」私の口からヤツが言った。
高音のナディアが響き、青いホログラムが現れた。

細い月を足に敷く女神像
マグデ・マレーナ・・ 女性性の愛を象徴するが故に 淫らな烙印を押された聖女。
全てを受け入れる 受容の愛。

その像に傅き、一心に祈りを捧げる修道女がいた。
そして、それを見守る騎士の姿。
彼らは 巡礼と信仰を通し深く愛し合っていた。

あるがままを受け入れる信仰は、時の権力者にとって 都合が悪かったろう・・
人間を恐れと依存でコントロール出来なくなる。

風に揺れるひまわり畑の、青い空のずっと高い所を、一羽の鳶が円を描いて飛んでいた
薄い雲が流れ・・ 乾いた風が 黄色いひまわりを大きく揺らした
まるでスローモーションのように ・・・
2人の運命は巡った。

目を開けると、目の前に子供と戯れる1人の男と、赤ちゃんをあやす女がいた。

「 信じる?・・何を? 」彼は さっき過ぎた時間の、同じ言葉を繰り返した
「 アイを信じる。その為に生まれて来た・・ 」私も 同じ言葉を繰り返した


ソウカ・・ ソウダッタンダ!


相対し極なる者の自らに アイを取り戻せ
ヤツの声がした。


アノ トキモ


「 マリオンさんと 同じ物が見えたら、きっと私も信じる事が簡単なんですけどね・・ 」 


ソウ イッタ


「 あんたは彼氏に言うんだ、 私の愛は絶対に変わらない。
どんなに離れていても、どんなに時が過ぎようとも、私の愛は永遠にあなたを愛している。と 」

「 ・・愛が永遠に愛してる?おかしな言い方ですね・・ 」

「 そうだよ、あんたが使ってるその概念は、アイシテルが使ってるだけだ
私が永遠に私をしている、と同じ事さ 」


ソウ イワセタ


阿鼻叫喚がこだまする炎の中で、呆然と座り込む少女の瞳には、その悪夢が
果てしなく映り込み続けていた。
時の果てまでも・・ 鏡のトンネルは同じ虚像を映し続けた。

「 マインドの闇は、ここから始まった 」

ルシフェルが金髪の少女を見つめると、ヤツの赤銅色から深翠色に燃える瞳が、 少女の煉獄の瞳に映り込んだ。
「 おまえのアイは何処にある? 」


イツモ


ウリエルは私を抱きしめ 尋ねた「 ・・・ 何故?・・ 」
私は、最期の息で彼に言った「 闇では・・ 闇と共に 」


エラバセタ


相対し極なる者の・・ 目の前に現れる人間
自らにアイを取り戻す・・ 自分を体験させる


アイヲ タイケン サセタ


その象形を通して 可視的な物質世界を超え
無限に広がるイデアを知る

それが この世界の秘密だ ------------

転生を繰り返し また巡り逢う
 

ペレト・イ
カク エク アフ ・・

「 私は・・ やって来た
お前は 急がねばならない・・ 」