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ゾディアック 12~ 81、82 、83、84、85、86~

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「 何だと!?うっ・・ 」オヤジは膝を押さえて痛がった。
ユシュリを火炎除草機で襲った時、私を蹴って痛めた膝だ。
「 ほら、興奮すると身体に悪いぞ。私はもう大丈夫だから、オヤジも気を付けて帰りなよ 」

力と恐れの茶番劇に踊らされながら、人は見たいものだけを見て生きている。


部屋に戻ると、カーテンに仕切られた隣のベットから泣き声がした。
「 うっ・・うっ・・ 」
昨日入院して来た新しい患者だった。付き添いの家族が帰って、急に寂しくなったのだろう。
泣き声は、夜になっても続いた。

「 大丈夫? 」私は声をかけてみた。
「 ・・・ 」泣き声が止んだ。
やっと静かに眠れる・・ そう思って目を閉じて暫くすると、また泣き声が始まった。
身体を起こして、そっとカーテンを開けた。

「 大丈夫?眠れないの? あ・・ 」私は息を飲んだ。
枕にうっ伏し泣いている、まるで小人か妖精のように小さな身体が、
明かりにぼんやりと浮かび上がった。

その子は・・ 初めて検査に訪れた時、病院の待合室で母親に付き添われて座っていた
難病を抱えた女の子だった。
あの時、問待合室の壁には一面、蠢く黒い影に覆われていたが
その子の周りだけ キラキラ煌めく光子が、蛍のように集まっていた。
待合室にびっしりと蔓延る黒い影は、その女の子の周りで 次々に浄化され消えていった。

「 人の形をした精霊・・ 」
不浄な場所には、時々そういうのが降りて来ている。
私はカーテンを開け、ベットをくっつけると 彼女の身体を抱いた。
子猫のように、か細い身体が震えていた。

「 大丈夫だよ、お休み・・ 」
微睡みの中、眠りに堕ちながら 私は夢を見た。

鳩尾の焼痕が燻り、ボロボロに傷つき転がった私の身体に、
キラキラ煌めく蛍のような光子が集まって来た。
光子は幾重にも重なり、すっぽりと私の身体を包みこむと
大きな光の繭となって、ドックン・・ ドックン・・ 脈打ち始めた。

抱かれているのは・・ 私の方だった

翌朝、目を覚ますと 看護師が覗きこんでいた。
「 まあ、マユちゃん、昨夜は寂しく無くて良かったわね 」
私の腕の中で、小さな女の子がキョトンとした大きな瞳で見つめていた。
「 ああ・・ この子が泣いてたから 一緒に寝たんです 」
私は起き上がり、自分のベットを元に戻した。

女の子は身体が成長しない難病で、年齢に体力が付いて行かず
足や股関節の手術を繰り返して入院していた。
今12歳だったが、驚くほど純粋で 2~3歳の心のままだった。

「 ねえ、マユの宝物をあげるよ。今日も一緒に寝ようね 」クルクルした瞳を輝かせて言った。
私は、一時間後には退院していた。
「 ごめん、マユちゃん・・ 私、今日退院なんだ 」彼女の手を握って言った。
「 でも、マユちゃんの事ずっと想ってるよ。心は一緒だよ 」
大きな瞳から涙が溢れ、シクシク泣き始めた。

彼女の小さな身体を抱きしめると、私の身体は再び光に包まれた。
「 ありがとう・・ 」私は彼女に言った。

相対し極なる者の自らに アイを取り戻せ
またヤツの声がした。

他の痛みを知ろうとする状態は、アイになる
他に恐れを見る者は、アイにならない
アイは今で永遠だ

そうか、そうだったのか・・

永遠の今、私は 光の繭に包まれていた。


~ 85 ~

人間という 同じ時空で三次元の器に集う者達は
それぞれの中に、多次元の理由を抱え 生きている

自我は、個である孤独の器に怯えながらも
同時にその状態を解き放つものを恐れる
三次元集合意識体

出逢うバイブレーションは、シンフォニーを奏でながら
個を超え 互いを活かそうとする


アイがいつも あなたと共に・・
あなたがいつも アイと共に・・

胸の奥深くから 呼魂する声を聞いているだろうか?



サロンへ着くと、受付にミオナが座っていた。
「 マリオンさん、お帰りなさい 」笑顔で言った。
「 ミオナ、久しぶり、元気にしてた? 」

更衣室で着替えていると、誰かが入って来た。
ギー・・
シャツから顔を出すと、モーリィが私の身体を見ていた。
何かを確かめているようだった。

「 いやぁ、マリオンさんが居ないと 店の雰囲気が違いますよね 」
「 そうなんだ 」私はモーリィに言った。
ドアの影にミクが立って、こちらの様子を伺っているようだった。


ザワザワ ・・・ ザワザワ ・・
ヒソヒソ ・・

空気が低く漂い
何かが息を潜めて、 じっとこちらを伺っていた。


着替えて受付に出ると、ミオナが誰かと話していた。
カヨだった。
「 カヨ! 驚いた。会いたいと思ってたのよ!何でここにいるの?」私は言った。
「 ああ、マリオンさんお久しぶりです。買い物に出たので、何となく来てみました。はは・・ 」
カヨは笑いながら答えた。

結婚して店を辞めて以来、もう何年も会っていなかった。
先日ナアナが見舞いに来た時、カヨの前世と一緒にナアナの前世が現れ
2人が聖堂騎士の前世で逢っていた事を知り、どうしてもカヨに確かめたい事があった。

だが、何年も会ってないカヨに突然連絡をして、どう切り出せば良いか分からずにいた所に
カヨの方からやって来たのだ。

「 ねえカヨ、ちょっといいかな 」私はカヨをサロンの外のベンチに連れ出した。
「 ・・はい? 」カヨは怪訝そうについて来た。

「 昔、カヨがダンナさんと付き合ってた頃、別れ話しで悩んでたじゃない 」
「 はい、あの時はお世話になりました。マリオンさんにも色々と相談に乗ってもらって
お蔭様で・・ 」
「 あの時、カヨとダンナさんの前世の話しをしたの覚えてる? 」
私はカヨの言葉を遮って聞いた。

「 は?はい・・ 。確か、私が聖堂騎士で、ダンナが修道女だったとか・・ 」
「 そう。あの時カヨが恋人に手紙を渡せず、途中で野たれ死んだ為に
恋人はカヨを信じられず、今世はその続きから始まった! 」
「 ・・・ 」私の勢いにカヨはあっけにとられていた。

「 その続きが、この前見えたのよ。カヨに初めてあの前世が見えた瞬間
ナアナって友達がメールを送って来たの。覚えてる? 」
私はお構いなしにカヨに聞いた。
「 さ・・さあ・・? 」
「 ナアナはあの時ゴンチャス巡礼が・・て言ったの。ナアナも聖堂騎士で
私にカヨの前世が見えた時、魂が呼び合い あの瞬間にメールして来たんだと思う 」

「 は・・ はぁ・・ 」
「 今も。私がナアナに 前世が見えた後、カヨに確かめたいと思いながら来たら
カヨの方から現れた。魂が呼び合ってる 」
「 え?・・マジっすか? 」カヨはドン引きした。

「 ねえ、彼氏と別れていた時、カヨは手紙を届けなかった?
何としても届けたくならなかった? 」私はカヨに聞いた。
「 ・・あ、その通りです。メールじゃなく手紙を届けました。
土砂降りの中 原チャリで届けました。バカですよね?はは・・ 」カヨは笑った。

「 やっぱり 」私は確信した。
「 ナアナは前世、カヨの手紙を受け取って恋人に渡す約束をしたけれど、果たせなかったの。
その事が今も繋ぐを果たせず 人の呪縛に囚われたまま 」