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しむろにと
しむろにと
novelistID. 51213
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言い訳したい恋

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 四十人近い生徒が詰め込まれた一つのクラスは、担任となる先生が現れるまで、
 期待と緊張で張り詰めていた。

 ノボルは誰とも目を合わせることなく慎重に辺りを見渡して、よし、と緊張す
 る心の中で安堵した。
 同じ中学校から入学してきている顔見知りは、クラスの中には予定通り一人も
 いなかった。

 中学生の頃、ノボルは勉強ができた。学校でも家でも、ひたすら勉強した。
 次々に浮かぶ煩わしい気持ちを紛らわせるには、「正しいこと」に集中するし
 かなかった。

 そんな理由で勉強が好きなわけでもなかったから、高校進学は学力ではなくて、
 環境を優先した。
 同じ中学から受験する生徒が出来るだけ少なくて、通学時間が一時間以内の高
 校を探した。

 条件に合う高校は少なかった。
 男子校であること、制服がブレザーであることの、第二条件たちを泣く泣く諦
 めて、決めた。

 選択した公立高校は、自宅から電車を使って一時間ちょっとの距離で、普通科、
 商業科、体育科があった。
 商業科は就職に強いと聞いたが、ノボルは普通が良いと曖昧に思って普通科に
 した。

 推薦入学も可能だと進路相談で何度も言われたが、面接試験をどうしてもやり
 たくなくて辞退した。
 それに、なんとなくズルをしているような気になった。

 母親からは、もっと学力の高い高校を目指せと散々脅されたが、この高校がい
 いと、一歩も引かなかった。
 心に後ろ暗い所はあったが、一般入試で受験し、無事にこうして高校生になっ
 た。

 数万円もする薄っぺらい定期券を見て、これから親に高い電車賃を負担させる
 ことを、申し訳なく思った。
 でも、その分、頑張ろうという気持ちが湧いた。

 ここで過去を捨て去って、新しい自分を作る。ノボルは密かに誓った。

作品名:言い訳したい恋 作家名:しむろにと