小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
しむろにと
しむろにと
novelistID. 51213
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

言い訳したい恋

INDEX|5ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 気が付くと、外はすっかり明るくなっていた。

 やらなければならない作業は、まだ終わっていない。
 顔を洗ってようやく落ち着いたはずの心に焦りが募って、てきぱきと動く。

 あと少しで区切りがいいというところで、軽快な電子音と共に、お客が入って
 くる。舌打ちしそうになるのを堪えて、レジカウンターの中へと向かう。

 パタパタとサンダルの底を打ち鳴らして、店員の存在を知らないようにレジの
 前を通り過ぎていく。
 小奇麗な身なりをしていて、細身の体をしならせている。
 控えめに染め上げた、茶色い髪が揺れている。

 顔は見えなかったが、すぐにそれが誰なのかを理解してしまう。
 懐かしさよりも、ジェットコースターで真下に向かっていくような、瞬間的な
 恐怖に襲われた。

 あ、と声が出てしまい、慌ててレジカウンターの影にしゃがみ込んだ。
 他の誰に見られても、罵られても平気だが、彼女だけには見られたくない。
 急にそんな風に思った。全身が脈を打っている。
 落ち着いて深呼吸をして、いつもの不愛想な、繰り返すだけのコンビニ店員を
 作り出す。

 でも、これは最後のチャンスかもしれない。
 何がチャンスだ。
 
 すぐに否定する心が騒ぐ。
 何度も思い返しては自己嫌悪に陥った、身勝手で気持ち悪いあの頃に、一体何
 が言えるというのか。

作品名:言い訳したい恋 作家名:しむろにと