言い訳したい恋
気が付くと、外はすっかり明るくなっていた。
やらなければならない作業は、まだ終わっていない。
顔を洗ってようやく落ち着いたはずの心に焦りが募って、てきぱきと動く。
あと少しで区切りがいいというところで、軽快な電子音と共に、お客が入って
くる。舌打ちしそうになるのを堪えて、レジカウンターの中へと向かう。
パタパタとサンダルの底を打ち鳴らして、店員の存在を知らないようにレジの
前を通り過ぎていく。
小奇麗な身なりをしていて、細身の体をしならせている。
控えめに染め上げた、茶色い髪が揺れている。
顔は見えなかったが、すぐにそれが誰なのかを理解してしまう。
懐かしさよりも、ジェットコースターで真下に向かっていくような、瞬間的な
恐怖に襲われた。
あ、と声が出てしまい、慌ててレジカウンターの影にしゃがみ込んだ。
他の誰に見られても、罵られても平気だが、彼女だけには見られたくない。
急にそんな風に思った。全身が脈を打っている。
落ち着いて深呼吸をして、いつもの不愛想な、繰り返すだけのコンビニ店員を
作り出す。
でも、これは最後のチャンスかもしれない。
何がチャンスだ。
すぐに否定する心が騒ぐ。
何度も思い返しては自己嫌悪に陥った、身勝手で気持ち悪いあの頃に、一体何
が言えるというのか。