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しむろにと
しむろにと
novelistID. 51213
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言い訳したい恋

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 こうなることがまるで必然であったかのように、気まぐれに開いた小学校の頃
 の文集には、不吉なことが書き連ねてあった。

 『 三十歳の自分へ。きっと辛い人生になる。
   もし生きていたら、おめでとうと言ってあげたい。』

 最初はもっと身も蓋もない直接的な書き方をしたはずだが、先生に咎められて、
 渋々書き直したことをなんとなく思い出す。

 両親を好きと言えないまでも家庭環境は悪くはないし、学校でいじめられてい
 たことも、たった数年ちょっとの人生で悲観的になっていたわけでもない。

 毎日、友達を誘ってよく遊んだ。
 駄菓子屋でお菓子を食べながら話をして、田んぼでザリガニを捕まえたり。
 サッカーやテレビゲームをして、自転車で走り回ったり。
 楽しい思い出が自然と溢れてくる。

 なぜそんなことを書いたのか不思議だった。
 でもすぐに心当たりを見つけた。長い間忘れていただけだ。
 そんな小さな頃から予感がしていたんだな、と少年だった自分を褒めたくなっ
 て、虚しくなった。

 何をしても喜びを見出せなくなってしまった。
 辛うじて残っている感情も、いつ忘れてしまうかも分からない。
 おめでとうと言えない未来が、最も現実的で、近くにいるように感じる。

 気が付けば、人生を終わらせる為の、強いきっかけを探しているように思う。
 あの時目的を果たせなかった細い縄は、今も押し入れの中で埃に埋もれている。

 予感は、当たるかもしれない。

作品名:言い訳したい恋 作家名:しむろにと