言い訳したい恋
自分の部屋で頭を抱えて悩んでいたノボルは、重くもない引き出しをゆっくり
と開け、そこにあった中学校の卒業アルバムを取り出した。
二度と開くことはないと思っていたアルバムをパラパラと捲っていき、真っ白
な最後のページを開いた。
「どうしよう」と、思わず口から言葉が落ちた。
結局、タカヤから中学校の卒業アルバムを持ってくるように言われてしまった。
重いし面倒くさいと抵抗してみたが、他のクラスメイトも見たいと騒ぎ、断り
きれなかった。
このアルバムを見られたら、きっとタカヤにからかわれてしまう。
中学校では友達がいない暗い奴だったと、ばれてしまうかもしれない。
軽蔑されて、中学校の時のようには、もうなりたくない。
ノボルはボールペンを手に取って、空白のページに存在しない思い出を、自分
で書こうと思った。
机に突っ伏して、涙を堪えた時の気持ちが蘇ってくる。惨めすぎる。
時計を見ると、日付が変わろうとしていた。
ボールペンを机に転がして、ベッドの中に潜り込む。
過去を知るものがいない高校を選んだことが、こんな形で裏目に出てしまうと
は、思ってもいなかった。
せめて一人、同じ中学の生徒がクラスにいたら、そいつにアルバムを持ってき
てもらえたのに。
いや、そうなれば今度はそいつが過去をばらしてしまうかもしれない。
どうにもならないと思って、ノボルはもう寝ようとしたが、目も頭も冴えてし
まっていた。
なかなか寝付けないベッドの中で、ノボルはどうすればいいか、もう一度真剣
に考えた。
時計の針だけが動く中、ふと、ノボルのアルバムを囲んだクラスメイトたちが
笑っている姿が見えた。
何も心配することはない。誰かにそう言われたような気がした。
根拠も無いのに、今と同じように笑って過ごせると、そんな予感がした。
急に眠たくて仕方がなくなった。
深い眠りに落ちるまで、安らかな気持ちでいっぱいだった。