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しむろにと
しむろにと
novelistID. 51213
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言い訳したい恋

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 具体的な対策など思いつかないまま、翌日どうにでもなれと、紙袋に入れた卒
 業アルバムをタカヤに渡した。

 タカヤはアルバムを笑顔で受け取ると、登校時間中のごちゃごちゃしたクラス
 に向かって、「おーい、みんなー」と大きな声を出して注目を集めた。

 「高科の好きな女の子を見つけるぞー」

 アルバムを捲りながらとんでもないことを言い出した。
 ノボルは空白のページばかり気にしていて、当然あるだろう質問を考えていな
 かった。
 アルバムを取り返したい気持ちに駆られるが、そんなことはしない。
 とにかくノリがいい、期待に応えられる人間になりたい。タカヤのように。
 タカヤの周りに人が集まりだしたのを見て、ノボルは笑顔で言った。

 「当てた人にはジュースな」

 ノボルは腕組みをして、余裕のある表情を作った。
 タカヤはわざとらしく喜んで、自分が可愛いと思った顔を次々と選んでいく。
 これだろ!と自信満々に答えるタカヤが面白くて、ノボルは正解されても別に
 いいやと思っていた。
 今までだったら、好きな人を教えるなんて恥ずかしくて絶対にしなかった。
 どうせ本人に告白するわけでも、思いが伝わるわけでもない。
 ここで言ってしまったほうが、きっと盛り上がる。

 「おおっ、この子可愛いな」

 タカヤの声が一段と高くなって、アルバムに顔を寄せた。
 見えねーよ、と頭を軽く叩かれたタカヤが変な顔を上げて、笑いを誘った。
 タカヤが見ていたのは、ノボルが想っていたその人だった。
 ショートカットで、薄く笑った顔がそこにある。

 クラスメイトの一人が、そんなに可愛いか?と反対する。
 タカヤはその言葉が理解できないという顔をしてから、可愛いだろと怒って言
 った。
 タカヤが間違いないよな、と言うのを聞いて、ノボルは答えた。

 「正解!でも、タカヤは何回も答えたから、ご褒美は無しな」

 用意していた答えを、ノボルは明るく言った。
 少しは笑いが起こるかと思っていたが、みんな驚いた顔をしている。

 「高科はよく分かってるな」

 しみじみと言ったタカヤの肩に手を置いたクラスメイトが、笑いを堪えながら
 言った。
 空白のページなんてどうでもよくなるくらい、大きな爆弾が落ちた。

 「これ、体育科の吉田(よしだ)アイコじゃん」

 ノボルだけがきょとんとして、教室は爆発したような笑い声に包まれた。
作品名:言い訳したい恋 作家名:しむろにと