愛き夜魔へのデディケート
普段誰に対しても明確な答えを出さない事で知られるファニーが、強く答えに繋がることを匂わせた……はっきりと、イワンワシリーという“場所”を口にしたのだ。
(間違いない……。ファニーは何か知っている…………ならば)
「だけど……決して探しちゃ駄目よ、ヴィオラ」
ここぞとばかりにファニーからユーリエの行方を聞こうとする前に彼女は言った。探してはいけない…………どういう事なのだろう。 私とユーリエの、付かず離れず違いせずの関係を知りながらもそれについて深く干渉する事はただの一度もなかったファニーが何故、今回に限って…………?
「ヴィオラ。どうせ貴女は聞かないでしょうが、せめて友人として忠告するわ……。これ以上ユーリエに深入りするのは止めなさい。私が言うのもアレだけど、貴女はどうも好奇心が強すぎる。自重しないといつかその代償……命で払う事になるわよ」
「ファニー…………」
それを最後に、ファニーの口は固く閉ざされた。
作品名:愛き夜魔へのデディケート 作家名:小鎬 三斎