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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  1話  『ハジマリ』

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……って別に、変な意味じゃないからな。

「スゲーなこれ!こんな煙で覆われてるのに全然見えるぜ」

凍弥の奴…ゴーグルを改造しやがったな。…まったく味な真似をしてくれるぜ。

「何をしているんだよ。早く脱出するぞ春斗」

「あぁ、そうだった。行くぞミナ!しっかり捉まってろよ」

「は…はい」

俺は、ミナの手をとり、ミナがいることを確認するとそのまま全速力でこの場から退散するのだった。



「はぁ~ホントひどい目に遭った。助かったぜ凍弥」

「別に礼なんかいらんよ。我がホープの危機を救ったまでだからな」

誰がホープだ。……まぁいいか。

「それよりさっきの約束はきっちり守ってもらうからな」

「あぁ、はいはい。心得てますよ??まぁ、たぶん気が向いたときにしか出ないと思うけど…」

「それでもいいさ。では、俺は、会長への報告があるから、行くな」

「あぁ、んじゃな」

凍弥は俺たちと別れ、校舎の向こうへ消えていった。

「それじゃ俺たちは帰るか」

「そうですね。用事も済みましたし帰りましょうか」

俺たちはゆっくりと家に向かって歩き出す。

「ふふふ♪」

「どうしたミナ?嬉しそうな顔して」

ミナは今にも踊りだしてしまいそうなくらいにやけていた。

「え?そうですか?私、顔に出ちゃってました?」

「あぁ。それはもう幸せそうな顔をしてな」

「あぅぅ…恥ずかしいです」

「まぁ気にするなって。笑ってるミナが一番なんだからさ」

「うぅ~何だか馬鹿にされたような気がしますけど」

ミナは、頬をぷくっと膨らませて怒ってみせた。

「違うって!俺は、ミナが笑ってた方が俺も嬉しくなるし。それに、ミナの笑ってる顔は好きだし、可愛いから。まぁ、そういうことなんだ!だから怒るなって」

「………。ヒナちゃん、それホント?」

顔を赤らめて、上目遣いで俺を見つめてくるミナ。
何だかこっちまで恥ずかしくなってくるじゃないか。
今考えると、さっきのは…いややめておこう。俺らしからぬ発言だったんでな。

「あ、あぁ、本当だ。だから機嫌直せよな」

「うん!えへへ♪」

ミナは、またとびきりの向日葵笑顔を見せた。
やっぱ、こっちのミナの方がいいよな。笑ってるこの笑顔の方が…。

「ヒナちゃん、さっき何で嬉しそうにしてるのか聞きましたよね?」

「ん?あぁ、聞いたが」

「それはね…嬉しかったんです。ヒナちゃんが助けに来てくれて。私が困ってもうどうしようも出来ない。そんな時、ヒナちゃんが、来てくれて。昔から、私が困っている時や悲しい時にいつもヒナちゃんが来てくれてよく私を助けてくれましたよね??その時のヒナちゃんは、とても格好よくて、やさしくて、あったかくて…。私の中では、ヒナちゃんはヒーローだったんですよ」

ミナは、ぽっと頬を赤らめて、そして目をキラキラと輝かせていた。
何だか俺、こそばゆくなってきたぞ。っていうか、恥ずかしい?

「それで、助けに来てくれたヒナちゃんは、やっぱりヒーローでした。私、まだ知らない人に接したりするの慣れてなくて。もし、ヒナちゃんが助けに来てくれなかったら、たぶん私、泣いてました」

いやいや、泣いてただろ!思いっきり。
……と突っ込みたいトコだけどやめておこう。
また、ミナが拗ねちまうからな。

「だから、ヒナちゃんが来てくれて本当に嬉しかったんです。たとえ偶然だったんだとしても、私は、ヒナちゃんが来てくれたことが本当に嬉しかった」

何だか褒め殺しだな…。
嬉しいんだが…、聞いてるこっちまで恥ずかしくなるぜ。

まぁ、ミナは昔から素直だったし、別に俺をからかって遊んでいるわけはないだろう。
でもなぁ、ミナは俺のこと過大評価しすぎなんだよな。別に俺、そんなに褒められるよう
なことはしてない。それに褒められるような立派な人間でも柄でもない。

「ヒナちゃん…、どうしたんですか?」

ミナが心配そうに俺の顔を覗きこむ。

「いや、何でもないよ。ミナが褒めまくるもんだから恥ずかしくなってな。でも、何で学園なんかにいたんだ?」

俺は、ミナに心配をかけないように、にかっと微笑んでみせた。

「え?あ、それはですね。明日から学園に通うことになったのでその申請をしてたんですよ」

「そういうことか。そうか、明日から通うのか」

「はい♪とても楽しみです」

ミナは、目をキラキラと輝かせていた。
きっとミナの頭の中では楽しい学園生活が描かれてるにちがいない。
みんなとの楽しい登下校、楽しい行事、学校の授業…エトセトラ。

だが、考えてもみろ。俺たちは重大なことを忘れてないか?
確かに、普通に生活すればこの想像の通り楽しい学園生活が送れるだろう。
授業とテスト以外。

そして、ふとあることに気づいた俺はミナに聞いてみる。

「なぁミナ、学園には…いや、自分のクラスにはたくさん知らない人がいるんだが大丈夫なのか?今日だって、あれだけの人数に囲まれてダメだったのに…、本当に大丈夫か?」

そうそれなんだ。ミナは、重度のあがり症+人見知りなのだ。
こんな状態で普通に生活が出来るわけがない。…というか無理だろ。
しかし、俺の心配をよそにミナはこう答えた。

「その心配はいりません。既に、対策案をおじ…学園長にお伝えしましたし…た、たぶん大丈夫です」

「何だ?その対策案ってのは?」

「それは内緒です♪」

ミナは、悪戯っぽく笑った。…気になる。




そして、俺たちは他愛もない話をしながら住宅街を歩いていた。
ミナがいなくなってからのあの後どうしていたか?ミナはどこにいたのか?など。
それに、ミナはこの街のことや俺のダチのこと…あと、学園のことなども聞いてきた。
こうしてミナと面と向かって、というか二人だけで話したのは久しぶりだよな。

昨日は帰ってきたばかりだったし、俺たちみんなでミナの歓迎会やってたし。話す機会が
なかったよな。二人きりってのは今日が初めてだろう。まぁ昔のミナは、いつも俺にべったりくっついていたから話す機会なんかいくらでもあったんだけどな。

しかし、互いが離れ離れになって話す機会が失われたせいなのか、そうでないのかわから
ないが、こんな他愛のない話でも聞き逃さないようにしていたり、どうでもいいことでも
笑い合えるようになった。知らない間に俺は、そうなっていた。たぶん、ミナとの別れがそうさせたのだろう。

ミナがいなくなったあの日、俺はすごく後悔した。あいつともっと遊んでやりたかった。
あいつともっと一緒にくだらない話とかして笑って、一緒にいつまでも笑い合いたかった
……と。

それからは、この時みたいに後悔しないように、毎日を楽しく生きよう、悔いが残らないように一日一日を大切にしようと思うようになったのだ。

まぁ、俺はそのおかげでめでたく学園では凍弥と同じく問題児扱いだけどな。
でも、後悔はしてないぜ。だって、毎日が充実してるからな。仲間がいて、毎日を楽しく過ごすことが出来る。これのどこに不満があろうか。

「それでですね……ん?ヒナちゃん、どうしたんですか?」

「いや何でもない。それよりこんなトコで俺と話していても大丈夫なのか?家の掃除の方はもう終わったのか?」