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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  1話  『ハジマリ』

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「きゃぁああ♪♪恥ずかしがってもじもじして赤くなってるよ♪♪か…可愛すぎるよ~☆私、どうにかなっちゃいそう」

「ねぇ、今から私たちの部活に遊びにおいでよ~。私、お料理研究会で、今日、いろんなお菓子作るからおいでよ~」

「あ…あ…あの…あの…、で…でも……うぅ」

「遠慮することないよ♪みんな歓迎してくれるから♪ねっ?」

「あ…あの…で…ですから……その……あぅぅ」

「ねぇねぇ、それじゃ、私たちの部活に来なよ~。ファッション研究会っていうサークルなんだけど、ちょうどお嬢ちゃんに似合う服があるのよ♪」

「でも……あぅぅ……うぅ…うっ…うぅぅう…」

ってちょっと待て。もしかして!?

「悪い、ちょっと道あけろ!」

俺は、空港に現れた芸能人に群がり溢れる人混みを掻き分けるかのように声のする方に
駆け寄っていった。そこには、あたふたして今にも泣き出しそうなミナがいた。

「やっぱりお前か。どうしたんだ?こんなトコで」

「うぅ…ヒナちゃん?ヒナちゃーん!!」

ミナは、俺を見つけると泣きながら俺に抱きついてきた。

「ちょ…ミナ」

「ヒナちゃん怖かったよ~。いきなりたくさんの人に囲まれて…うぅうっ…それにみんな知らない人たちで…うぅ…」

そういえば、ミナの奴、人見知りが激しいんだったな。

「ミナもう大丈夫だから。俺がいるから大丈夫だ。だから、もう怖くないから泣くなって。あぁほら涙拭け…ほれ、ハンカチ」

俺は、ポケットからハンカチを取り出し、ミナに渡す。
そして、いつものように泣いてるミナの頭を撫でてやる。

「ぐすっ……うん」

ミナは、少しずつ泣き止んでいき、安心したのか笑顔を取り戻してくれた。
ホント泣き虫なトコは昔から変わらないな。

「それじゃ帰るか。こんなトコにいても仕方ないしよ」

っていうか俺がこんなトコにいたくない。

「そうですね。私も早くおうちに帰りたいです」

そう言うとミナは、俺の腕にしがみついてきた。

「ちょっと~何よあなた!いきなり来てさ。その娘は、今、私たちが誘っているのよ~!邪魔しないでよ!」

「あぁ悪いな。こいつは俺の先約だ。それに俺の身内なんでな。学園を案内してやってたんだけどこいつ途中で迷っちまったみたいでさずっと探してたんだよ。まぁ、前もって、『もし、迷ったら職員室にいろ』って言ってあったおかげでこうして事なきを得たってわけだ。ホント見つかってよかったぜー。まぁ、そういうわけで俺たちはこれで…」

俺は、そう言うと猫に狙われている子ネズミのように急いでこの場から立ち去ろうとした。

「ちょっと待ってよ!なら、保護者であるあなたに許可をもらえばこの娘をレンタルできるのね」

そんなモノみたいに言うな!しばくぞッ!俺の目が黒い目のうちにとっとうせやがれってんだ!

「いや、待ち合わせがあってな。もう時間がないんだ。だから、それは無理だ!諦めろ」

「いいじゃない!ちょっとぐらい」

「そうよ!そうよ!」

ちっ…ひつけーなこいつら。
しかし、ここで問題を起こすとまた職員室送りだしな。
だが、このままこうしていても時間の無駄だし…どうしたものか。

「困ってるみたいだな。春斗」

「その声は…凍弥か」

後ろを振り向くと、いかにも怪しげに不敵な笑みを浮かべて凍弥が立っていた。

「何だ?今は激しく取り込み中だ。俺は忙しいんだ。用事があるなら今度にしてくれ」

「まぁまぁ、そう邪険にしなさんな。せっかくお前のためにいい逃走手段を用意してやろうってんだからな」

「何だよ、その逃走手段ってのは?激しく怪しいぞ!お前のことだ、絶対何か裏がある、そうだろ?」

「おやおや…全く失礼なヤツだな。まぁ、半分はずれで半分正解と言っておこう」

「素直にあるって答えたらどうだ」

「まぁそんなことはこの際どうでもいいだろ。こうしている時間も惜しいからな。だから、単刀直入に言うぞ~。取引しようじゃないか」

「は?いきなりわけがわからんぞ!どういう意味だ、それは?」

「そのままの意味だ。俺がお前たちを助けてやるから、その代わりお前たちは今度は俺の要求に応じてもらう。ただそれだけ…簡単だろう?」

「何が簡単だッ!お前のことだ、その要求っていうのはとんでもないことに決まってる!そんなのはごめんだ!その要求ってのを話さないかぎり俺は、その条件を呑むことはできん」

「やれやれ。そうか、それじゃ教えてやろう。俺たち生徒会に入ってくれ」

「お前にしては意外な回答だな。でも、生徒会か…。なんか生徒会って堅苦しい感じがしていやなんだけどな」

毎日出席、毎日活動、毎日疲労、…エトセトラ。

「そんなことねぇって。会長から聞いたと思うが、世間一般にいう生徒会とは根本的に違うんだ。まぁ、言ってみれば同好会やサークルみたいな感じでとらえてくれた方がいいかな。出席したい時に出ればいいし、出席したくない時は出なくてもよし。俺たち生徒会に縛りは一切ないのさ。安心しろって。それにだ…ここだけの話だけどな、俺たち生徒会は、基本的には自由をモットーに活動しているのさ。表向きは、学園の運営などの活動を任されて活動しているが、裏では、会長をはじめとして、学園生活を面白おかしくをテーマにし、活動しているんだぜ??どうだ?楽しそうだろ?入りたくなっただろ??」

何だかどっかのやばい秘密結社みたいだなそれは…。何だよ裏って…大丈夫なのか?
姉さんってばホント退屈が嫌いなんだな…。まぁ、昔からそうだったけど。

「まぁ…それなら入ってもいいかな。暇潰しにはなりそうだし」

「おぉ!入ってくれるか!それはありがたいことだぜ!これで、会長も…」

「何だ?姉さんに頼まれて来たのか?」

「ん?あはは。はて…何のことだ?」

とぼけやがって!まぁ、どうせそんなことだろうと思ったよ。

「まぁまぁ。それじゃ取り敢えず取引成立ということでいいよな?」

「あぁ」

「じゃ俺もそれに答えなければならんな。準備はいいかい?いいならすぐに実行するぜ…?」

「ヒナちゃん…」

ミナは、産まれて間もないひな鳥を思わせるような不安げな表情で俺を見つめる。

「大丈夫だ。凍弥はおかしな奴だが、こういうことに関してはかなり心強い奴だ」

「…そうですか。ヒナちゃんがそう言うのでしたら安心ですね」

「おかしな奴というのは納得いかんが…まぁいいさ。では、お前たちはこれを渡しておこうかな」

と凍弥から、ゴーグルを渡される。
…って、なぜにゴーグル?

「取り敢えず、かけておけばいいのか?」

「そういうことだな」

凍弥に言われた通り俺とミナは、ゴーグルをかける。

「じゃ、いくぜ??ニンニン」

そう言うと凍弥は、何かを廊下に叩きつけた。…なんだ?
すると、眩い光と共にけむりが廊下全体を覆いつくした。

「何よこれ!ごほっ。前が見えない」

「ごほっごほっ!きゃあ!誰か今私のお尻触ったでしょ!?」

凍弥の妙なアイテムのおかげで、廊下全体の視界がシャットアウトされた。
女子たちは、けむりで視界が悪いようだった。
…でも、俺たちゴーグル組は違うのだッ!!
なんと俺たちは見えるのだ。それも丸見え。