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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  1話  『ハジマリ』

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「桜舞うこの出会いの季節に、俺はなんという失態をしてしまったんだぁぁああッ!!これでは、俺の女の子だらけのウハウハ学園ライフ化計画の夢があああぁああッ!!」

一通りショックを噛み締めたのかガクっと肩を落とし、今度は泣きじゃくる暁。
いや…、その前にありえないからそれ…。

「まぁそう気にするな。端からそんなの無理だから」

「いいよな~余裕のある奴はよ~」

「はぁ?別に余裕なんかねーよ」

「別に…、別にって言ったか。このギャルゲ症候群が!!」

暁は、妙なテンションになって声を荒げた。

「誰がギャルゲ症候群だッ!!」

「ふんっ!白々しい野郎だ!まぁいい、教えてやる。お前はな、男の敵だッ!!喧嘩上等じゃーいッ!!コラ」

「はぁ?男の敵だぁ?どういう意味だ、それは?」

「まず!俺の愛しの明日香ちゃんと同棲生活してるじゃんかよ!」

「はぁ?馬鹿かテメェは!明日香は俺の妹だ!一緒に住んで当然。同棲なんかじゃねーわ!水道で顔でも洗ってきやがれ!」

「ふごぉ!んがぁ!ぎぇっ!」

俺は、暁に容赦なく拳を叩きつけてやる。…これで目が覚めるだろ。
しかし、ヤツは暁だ。何とも打たれ強い。
本気とまでいかんがそれなりに普通のヤツが悶絶するくらいの力でやったはずなのだがこいつはよろめきながらも立ち上がる。

…さすがだよ。これだけは賞賛に値すると褒めてやってもいいぜ。
頭を擦りながら暁は、また口を開く。

「うぐぐ…。そ…それだけではない。冬姫ちゃんとも仲いいじゃんか!」

「冬姫?あいつは、幼馴染だからな。昔からずっと一緒にいるわけだからな。仲がよくて当然と言えば必然。それに、まどかちゃん、生徒会長で従妹でもある祢音先輩。まぁ、かえでと茜は除外するとして…、まぁとにかくだ、お前はこれだけの美少女とすでに親密な関係を築いているのだッ!」

「お前…、かえでと茜が聞いてたら怒るぞ」

っていうか姉さんは身内だから。頭数に入れるのは間違いじゃないか。

「いいんだよ聞かれなけば。大体だな考えてもみろ、あいつらに女気があると思うか?いやないだろう。断言してもいいッ!」

「お前なぁ…」

でも、かえではあんな性格だし、女にしては変わった趣味してるし。茜は、女友達っていうよりも気心知れた男友達みたいなもんだしな。

「かえでは、まぁ確かに同志としてはとてもいい人材だ。だがしかし現実に『女』として考えるとそうはいかない!なんせあのなりにあの性格…。魅力ある女には値しない。実に嘆かわしいッ!」

「お…おい、暁」

「それに茜なんかもってのほかだッ!何だよッ!女のくせにあの馬鹿力は?!何かあるとすぐに拳でモノ言わすし、まるで漢みたいだぜ。それに茜の本性は凶暴かつ冷徹ときた。実に嘆かわしいパート2ッ!!…まぁスタイルだけはいいけどな。だがしかーしッ!!いくらスタイルがよかろうが、いくら容姿がよかろうが、女としての魅力がなければ意味ないんだあああぁぁああああッ!!」

「………」

馬鹿の熱弁に一瞬、呆気をとられてしまった俺だったが、ハッっと気が付くとさらにしゃべりまくっている暁を軽く制する。

「って何だよ、春斗」

「………」

俺は、黙秘権を頑なに突き通すかのように無言で暁の後ろを指差す。

「何だ、後ろがどう…した…って…。……ひぃッ!!」

暁の表情が一気にさぁっと波が打ち寄せるかのように青ざめていく。
それもそのはずそこには世にも恐ろしい魔物がずっしりと構えていたのだから。

「へぇ~そうなんだ。あたしってあんたから見るとそんな風に見えたんだ」

茜は、あくまでも笑顔を装いつつ、暁に詰め寄る。
こ…怖え~。茜怖いってその顔はよ。
まるで言いたくても言えなく黒い思いを内に秘めた寡黙メガネっ娘のような表情だぞ。

「う……」

茜に圧倒させられて、暁は、後ろへ一歩後ずさる。
しかし、

「そうだね。あたしたちがそんな風に見られてただなんてショックだよね」

かえでもこめかみをピクピクさせつつも、なんとか笑顔を装っていた。

「ま…待て!誤解だ!は…話せばわかる!」

「誤解?さっきのがどう誤解だったんだ?あたし、わからないな。かえではどうだ?」

「ううん。あたしにもさっぱりだね…。あれがどう誤解だったかだなんてさ。ふふふ…」

かえでは、今にも怒りが暴発しそうなのを極限に抑えているようだった。
お…俺、今まで生きてきて初めてかえでに恐怖というものを感じさせられたぜ。

「だよな。じゃ、これはもう、この馬鹿に聞くしかないよな」

あぁ~、もう茜の奴、マジギレ寸前だ。

「ん~そうしかなさそうだね」

二人は、じわじわと暁ににじり寄っていく。
うわぁ~これじゃまるで『○イオ○ザード』だ。武器が底をついて残りがナイフだけになり、為すすべもなくゾンビに立ち向かう、まさに、今がその時だ。…暁ファイト。

「う……は…春斗……」

暁はチワワのような瞳で助けを乞うかのような眼差しで俺を見つめる。
しかし、そんな暁にもちろん俺は、こう言ってやったさ。

「悪い。俺にもどうしようもない。運が悪かったと思うしかないな。んじゃ、後は頑張ってくれ」

「お…おい、春斗!待ってくれ、あっ!おい…この薄情者~!!」

何言ってんだ!お前のは自業自得だろ!俺は無実だ!
俺は、何も『言ってない』。お前は、べらべらとしゃべりすぎた。だから、お前は罪。
口に出すのはいけないことでも、考えるだけなら個人の自由…、人の自由だからな。

「さぁ、念仏は唱え終わったか?覚悟はいいか?ひひひひひひ」

「ひぃ!!」

「ん~じゃあ、たっぷりと可愛い悲鳴を聞かせてもらおうかな~?ぬふふふ☆」

「ぎやあああぁぁぁあああああ!!」

放課後の校舎に、暁の断末魔が鳴り響くのだった。



後から気づいたのだが、凍弥の奴…、いつの間に消えたんだ?



さぁて、ようやく放課後だ。
今日もなんだかんだで疲れる一日だったぜ。
そういや、あいつら結局HRの時間にも戻って来なかったな。
まぁ、あいつらのことだ。別に心配するほどでもないだろう。

「んじゃ、帰りましょうかね」

冬姫は…いないか。かえでは…まだ帰ってきてないし。以下省略。

「しょうがない。一人で帰るか」

俺は、机にかけてある鞄を持つと、教室からすたこらさっさと昇降口に向かった。

「ん?何だ、何の騒ぎだ?」

昇降口に向かう途中だった俺の目の前に、何やら人だかりができていた。
あれは……職員室前だよな。何でこんなトコに。
俺なんか用事以外にこんなトコに立ち寄りたくねーってのによ。
追試、生徒指導、反省文…。こんなトコにいてもいい気分しないんだよな。
まぁ、自業自得なんだろうけど…。

なんにしても、こんなトコにいるのはごめんだぜ。さっさと家に帰ろう。
ミナの家の掃除の手伝いもやってやらんといけないしな。
俺は、溢れんばかりの人だかりを掻き分けながら昇降口に向かおうとする。

すると、

「ねぇ、この娘可愛いよ~。ねぇ、お嬢ちゃんどこから来たの?ここには何しに?」

「あぅぅ…あ…あの…あの…ふにゅぅ…」

ん?この声……どっかで聞いたことあるような…。