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85 55キロメートル、リターンズ11/15

　　　第42話の続きです。

　ワタクシの住む神戸ではこの時期長年続くイベントがあります。

　　　六甲全山縦走大会

という、神戸の西にある須磨浦公園から東へ続く六甲の山脈を尾根伝いに、55キロメートル先の宝塚まで１日かけて歩くというそれはもう過酷な大会があります。越える山は両手で足りず、ほぼ確実にヒザ、ヤられます。

　前回は頭が筋肉の激体育会系の上司に誘われ行かされ……もとい、行かせていただいたのですが、今年は個人的に参加してみたのです。何でそんな過酷な大会に参加するの？と聞かれれば、山が好きだから、それだけなんですよね。歩ききった達成感だけのために行くわけです。それに、一緒に行っても結果待たせるので申し訳ないですし……一人の方が行きやすいです。
　かつてムーミンがスナフキンに「何でギターを弾いてるの？」と聞いたら彼はクールに一言、

　　「それはね、ギターが好きだからだよ」

と答えたかの如く似たところです。トコトンまでやってみるのは好きなんです。　

　　　＊　＊　＊

　この日は生憎の曇天、というより雨天。いきなりレインスーツの出番。
　早朝５時、夜明け前にスタート。ヘッドライトの光を頼りに夜の山を進み、雨に打たれ、靴は泥にまみれ、ゴールを目指してひたすら歩く歩く歩く――。

　途中のチェックポイントを通過し、ボランティアの皆さまに応援されて痛いヒザを我慢と気力で前に出して55キロメートル先のゴールにたどり着いたのは午後８時過ぎ。１日太陽を見ることなくゴール。記念品の盾を片手に記念撮影してると、今回不参加の上司から連絡が――。
「おう、そろそろゴールしたやろう」
「はい、ところで用件何でしょう？」
「来週、行くで」
「何を、ですか？」
「マラソンやがな、神戸マラソン」
　そういやウチの上司。ここでしか言いませんけど頭が筋肉の……。本日開催の神戸マラソン、抽選当たったそうです。というわけで沿道の応援に行きました――。

　うーん、今年抽選当たってたら走らされてたかな～。おっと、ちょっと怖いことを考えてしまいました。
　そもそもワタクシ、体育会系ちゃうのに……。