ihatov88の徒然日記
2 ソ・ラ・ミ・ミ 3.22
ワタクシ、相手先と時間を合わす必要がある仕事をしておりまして、夜中に勤務をすることもあります、それもけっこう頻繁に。
同じ地球の上に立っているのに一方は昼で一方が夜、そんでもって一方は夏なのに一方が冬であるんだから世界というのは広いものです。地球が太陽の回りを回っていると唱えたコペルニクスやガリレオもすごいですが、地球が丸いんだと唱えた人はもっとすごいなあと思います。
いつ地球が丸いと証明されたのかは調べていないので知りませんが、実際に丸い地球を見たのは20世紀の中頃にガガーリン大佐がボストーク1号に乗ったのが初めてだし、見たことある人間は数えるほどです。見てもないものを証明するんですからやっぱりすごいなあと思うのは素直な感想であります。
それでは本題。
巷では人が寝静まった時間に仕事をするわけですが、昼間帯は国内の相手先がいるかので寝るわけでなく普通に働いています。人はやっぱり暗くなると休むようにできているようで、夜中になると眠くなります。
仕事なので割り切って、時には上のまぶたと下のまぶたが愛し合うのを阻むかのように働かねばなりませんが、その時々によって仕事の量も質も違っておりますので、待機の時間が長くなるときも、あります。
夜中仕事に出てても待機している時は決まって同僚たちとテレビを見ます。昼間忙しかった時はだいたいテレビの音が催眠術かお経かに聞こえて来て、睡魔に襲われます。
職場の若手が「睡魔」という単語を「スイマー(swimmer)」と聞き間違え、もし睡魔ではなくスイマーが襲ってきたら怖いなあって話をして盛り上がったりしました。余談ですが追って来る絵を想像したらなんとも馬鹿馬鹿しい。この時の泳法はやっぱりバタフライでしょうか?
* * *
そんな若手を先に仮眠を取らせて、私が先に電話番をしていた時のことです。一人になると余計に眠い。人間動きが止まるとスリープ状態になるってのは本当だ。まるでPCみたい、と考えてはまぶたの恋路を阻み続ける。それでも眠いものは眠い。
そんな時です、夜中の4時5時くらいでしょうか、テレビでニュースが流れてたんです。
「こんな時間に何かいな?」
なんて思うんですが半分寝ぼけてて詳細に聞く耳もなく、一つのフレーズだけが半分休止中の耳に飛び込んで来たのです。
大地震の影響で首都『ホニャララ』は……
「なに!ホニャララだって?」
まどろみの時間にクイズはないやろう?ホニャララって――。最初はふざけてると思ったんです。深夜放送ってそんなのよくあるから。
でも眠い目を開いてテレビを見ると「ホニャララ」が地震でめちゃめちゃになっている映像が出てるんです。南の島ということまではわかります、ニュースであることは間違いないようです。
「ってことは、ホニャララって町があるんかえ?」
そんなネタになるようなふざけた町の名前があったら自分が知らないはずがない、根拠ないけど。残念ながらそれ以外の情報はわからず結局ニュースもそこで終わったのです。
私は、答えがわからんまま後輩が仮眠から戻ってくるのを待った。やうやう白くなりゆく山際の時間帯に後輩が戻ってきたので、交代の引き継ぎに
「何かありましたか?」という質問に対し、
「南の島のホニャララで大地震があったみたいやで」
というと後輩は「またまたぁ~」と笑いながら、
「それを言うなら『ホニアラ』の間違いとちゃいますか?」
「ホニアラ?」
聞いたことあるような、無いような。たしかに響きはにている。
「南太平洋のソロモン諸島の首都ですよ。ガダルカナル島にあるんですよ」
「へえ、知らなんだ――」
地名と言うのは難しい、そんな名前の町が本当にあるのだ。地図を見ればたしかに書いてある「ホニアラ」と。ホニアラの皆さんごめんなさい、私が無学でした。
かく言う後輩も最近おじいちゃんを連れてガダルカナルに行った時に知ったそうだ。彼のおじいちゃんは戦争でガ島に赴任し、多くの仲間を失い現地の慰霊碑の前で号泣したそうだ。日本人なら知っといた方がいいですね。ホニアラという町があるということ、もう忘れない、たぶん。
ソラミミがちょっとしたことを気づかせてくれたお話です。なかなかやるじゃん、後輩。さっきいじったスイマーは取り消そう。
* * *
「センパイ、僕もそんなソラミミあったッスよ、こないだ」
今度は自分が仮眠に行く前に後輩が切り出した。
「僕も半分寝かかってたらテレビで『江沢民、新曲発表』って言ってたんスよ」
「何?江沢民(コータクミン)って中国の元国家首席が?」
後輩は笑いながら「だからソラミミって言ってますやん」というのでオチがわかった。
「江沢民、コータクミン……。ああ、ほいほい。オモロイやんかそれ」
「寝ぼけてなかったら気付きませんでしたわ」
「ホンマやなあ」
仮眠の前に人笑いして私は仮眠室に向かった。さあ、明日も仕事頑張ろう、っと――。
作品名:ihatov88の徒然日記 作家名:八馬八朔